こんな仕事絶対イヤだ!

お江戸に舞い降りたファンシーおじさん――とっかえべえ

2017.04.23 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第17回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

お江戸に舞い降りたファンシーおじさん

「とっかえべえ、とっかえべえ」の掛け声とともに、江戸市中を歩き回ったクズ鉄バイヤー。宝暦(1751~1764年)の頃、さかんに活動していた。その名の通り物々交換をする生業なのだが、クズ鉄と交換してくれるのが飴という、ちょっとファンシーなおじさんである。

江戸時代において古鉄買は認可制だったのだが、とっかえべえにそのライセンスはない。“買い入れるのではなく交換する”という体裁の、いわば法の抜け穴を突いたニッチなビジネスであった。しかし、ふつうに古鉄買がいるということは、鍋釜といった類の大きいサイズの鉄はほとんど持ち込まれない、ということでもある。彼らの下に持ち込まれていたのは、壊れたキセルの金属部分や、折れ釘などがほとんどであった。そうした物を拾って持ってくるのは子供たちが多かったので、飴と交換するのがいちばん合理的だったのである。ちなみに飴の種類は、大きな飴のかたまりをナタで叩き割った“ぶっかき飴”や水飴など、鉄の重さに応じて調節することが可能なものであった。

子供が自分で拾い集めたものを物々交換する、という仕組みは自立の精神を培うことができてけっこうアリなのでは、と思う。さらに、成長した子供を取り込む発展形として、クズ鉄と春画を交換してくれる“夜のとっかえべえ”なんかがいたりしたら最高なのだが。クズ鉄の重さに比例して内容もハードになっていくシステムで。エロ少年が結合部見たさに家の鍋釜持ち出して、ソッコーでばれてカーチャンに頭ひっぱたかれたり……なんてことがありつつ、今日もお江戸の夜はふけていくわけである。という妄想。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学卒業後にパソコン雑誌の編集を手がける。また、フリーライターとして文房具、自転車などの書籍のライティングや秋葉原のショップ取材等もこなし、多岐に渡る分野でマルチな才能を発揮している。

著書

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