「家族」というチームのつくり方

頑張って働いてるのに「家族から感謝されない人」に欠けている視点(後編)

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無茶な要求に対して
両輪思考で向き合えるか

前述のオリエンタルラジオの中田さんは、「奥さんからの一見無茶な要求があったから、YouTubeに専念できた」とおっしゃっています。
中田さんは、テレビの仕事を続けることでは収入を上げて時間を作る未来は見えなかったそうです。
だからこそ、思いきってテレビの仕事を減らし、YouTubeに注力する決心がついたのです。
それで結果として人気を博して大いに稼ぐことになり、シンガポールに移住して、家族との時間を増やしながらリッチな生活を手に入れました。
強引にまとめに入りますが、つまるところ、奥さんからの一見無茶な要求にどう向き合うのか、ということが現代の旦那さんの大きなテーマになるのです。

トヨタの子会社は、親会社の無茶な要求を「自分たちを大切にしていない」と愚痴って拗ねるという選択肢もあったことでしょう。ですがそれでは、グローバルな戦いのなかで、競争力がつかず、淘汰されていたはずです。
奥さんから、「収入を増やして」「でも家庭との時間を増やして」というのは、無茶な要求なのでしょうか。
むしろ、収入を増やしつつ労働時間が減っていくというのは、これからの時代を生き抜いていくには必要な考え方であり、あなた自身も重要だと思っていることなのではないでしょうか。
その意味では、日曜日に仕事を入れたときに、「これはまずい、生産性が上がっていないぞ」と危機感を持てない私たちのほうこそ、本当の意味での「仕事への理解が足りない」とも言えてしまうのではないでしょうか。

私自身、家族に関しては、両輪思考ならぬ「片輪思考」で考えてしまいがちです。仕事は大切なのだから、仕事を優先してしまうのです。ですが、それではダメなのです。
奥さんのほうがよほど、両輪思考です。
そこに甘えがあると、うまくいきません。

奥さんの要求を
自分の要求に置き換えよう

たとえばですが、奥さんと夫との関係を、上司と部下として見てみましょう。奥さんが上司で、自分が部下としてとらえてみてください。
細かく指示を出してくる上司っていますよね。全部自分で確かめないと気が済まない上司。そういう上司がいいか悪いかは別として、そんな上司に対してつい「うるさいな」「信用されていないんじゃないか」と悪いふうにとらえてしまいがちです。
ところが、上司との関わりがうまい部下は、そんな対応はしません。口うるさい上司であっても、「それは私自身もやりたいと思っていました」と上司の要求を自分の要求に置き換えて、物事をスムーズに進めてしまいます。
家庭でも、奥さんの要求を自分の要求に置き換えることがとても有効です。

自分も日曜日に仕事を入れたくないと思っていた。
でも入れざるを得なかった。
そうしたら、どうすれば日曜日に仕事を入れない状況を作れるだろうか? 奥さんに言われたととらえていると、仕事への理解がないとムッとしてしまうかもしれませんが、自分の要求として考えてみたら、やれることがまだまだあることに気づきます。
そうやってスタンスを変えてみると、奥さんの態度もがらっと変わるはずです。

奥さんは、あなたの仕事を応援しています。両輪思考を忘れてしまうことを恐れているだけなのです。
私の妻も、私自身が両輪思考を忘れず、何とか頑張ったものの、日曜日に仕事が入ったということがわかると、「日曜日なのに大変だね」「頑張ってね」と言ってくれます。

つまり、奥さんの不安を払しょくできていないだけなのです。
奥さんが仕事への理解がないと思ったら、それは、私たち自身の両輪思考が足りない、そしてそれを伝えていない私たちの問題なのだと捉えた方が、解決に向かうでしょう。
あなたの奥さんは、あなたの仕事を理解し、応援してくれている。そのことを信じていいのではないでしょうか。

 

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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