とくに原因があるわけでないのに、家族の仲がなんとなくよくない気がする。家族みんなが、それぞれ無関心であまり会話がない。自立しているとも言えるし、わずらわしさがないとも言える。けれど、なんとなくさみしいような……。
家庭の雰囲気がそんな状態に陥っている場合、もしかしたら、夫であるあなたの、もしくは奥さんの、もしくはお子さんの「自己効力感の低さ」が問題の根っこにある可能性があります。
というのも、自己効力感というものはあらゆる行動の「前提」になるからです。自己効力感が低ければ、「どうせできない」「どうせ変わらない」という考えになり、行動を起こして人に関わろうという気さえ起きなくなってしまうのです。
たとえば子どもへのしつけで、親が自己効力感の低さから「どうせ言っても聞かない」という考えになってしまえば、親は子に関わろうとしなくなってしまうでしょう。夫婦で「どうせ話しても変わらない」という考えになっていては、夫婦の会話はなくなり、お互いに無関心になり、その関係性は冷戦のような状態になってしまいます。
自己効力感というと「自己」にだけに限定された感覚ととらえてしまいがちですが、その限りではありません。「この関係は良くできる」「自分は友好的な人間関係を築ける」というように、「周囲」を変える力も指すのです。この力のことを「社会的自己効力感」ということがあります。
自己効力感に作用することで、うまくいったケースを例を出します。私と息子の身近な体験からです。
子育てというのは本当に難しいのですが、うちの子がいま小学校3年生になります。算数が苦手で、塾をめちゃくちゃ嫌がってて、どうしようっていうのが奥さんの大きな悩みの種でした。通わせるのも宿題をさせるのも、とても大変で悩んでいたのです。
そこで、「もうあなたが見てくれ」とお願いされ、以前からちょくちょく見ていたのですが、私が本格的に見ることになりました。仕事で使っている組織論や人材開発のノウハウを使って、本腰を入れて改革しようと乗り出したのです。
息子は、150点満点のテストで30点しかとれない状況でした。そもそも難しいテストで、平均点でも60点くらい。息子は平均にさえ届いておらず、苦手意識どころか拒否反応さえ示していました。「算数」と聞くだけで嫌な顔をするような状態です。
テストの解答用紙を見てみると、問題が全然解けていませんでした。もうなんかこう、最初のほうで投げ出しているような感じです。
でも、わかってないかというとそんなことはありませんでした。授業で習った計算はできるんです。つまり、授業で習ったことと、テストで問題を解くことがうまくつなげられていないようでした。
なので、「この問題解けたんじゃない?」「この問題解けたんじゃない?」と1つひとつ寄り添いながら問題を解いていったんです。「これとこれとこれを解けてやれてたら100点超えるよ」と言ったら、息子は「えー!」を目を輝かせました。
その後、同じ問題をコピーして、時間制限なしで私が横に付きながら一緒にやってみました。もともとは40分のテストなんですけど、40分ではちょっと埋まってなかったので、時間延ばしてやろうってことでやって。 結果として倍の時間はかかったんですが、それで採点してみると120点をとれたんです。それで、息子はいままで見たことないぐらい「やったー!」と大喜びして、「算数が好きになったみたい」と奥さんに言ってるんです。奥さんは「 ええ!?」ってびっくりしていました。
そもそもその塾は、宿題でやった内容がテストに出るようになっているので、宿題をちゃんとやっていれば高得点をとれる設計になっていました。
こんなふうにして算数が好きになっていった息子は、それから高得点をとるようになりました。もともと宿題はちゃんとやってましたが、「僕は算数が解けないんだ」と思って取りかかるのと「僕は算数が解けるんだ」と思って取り込むのとでは、理解度がまったく違うのです。