2021東京ヤクルトスワローズ 高津流 燕マネジメント

「チーム内ライバル」の存在が
競争心を育み、組織を強くする

青木宣親を決して代えない理由

――先ほどの「誤算」において、コロナ禍による隔離のお話がありました。1月の自主トレ期間中、そして開幕直後の4月と、二度も隔離生活を余儀なくされた青木宣親選手がなかなか調子が戻らずに苦しんでいます。監督は青木選手についてどのように見ていますか?

高津 これが、若い選手だったり、チームの中心ではない選手だったら、間違いなく代えています。でも、これが青木だから、チームリーダーだから、「打てないから」という理由で外すことはないですね。

――その理由を詳しく教えてください。

高津 別に我慢しているわけじゃないんです。彼がこれまで経験してきたこと、背負っているものを考えたら、厳しい言い方になるけど、彼はすべてを背負って出続けなければいけないんです。たとえ打てなくても、ベンチの中で声を出す、雰囲気を盛り上げるのが彼の役目です。なかなか成績が出ないと「申し訳ないな」という思いに、当然なります。でも、青木はそれでも試合に出なきゃいけない数少ない選手の一人なんです。

――数字とは別の役割が青木選手にはある以上、打てなくても試合に出続けなければいけない責任があるということですか?

高津 そうです。それはかなり辛いことだと思います。でも、彼はそれを背負っていかなきゃいけない選手です。もちろん、体調を見ながら休養を与えたり、コンディションに注意する必要はあるけど、基本的には彼を外す気持ちは僕にはありません。それは、リリーフエースの石山(泰稚)も一緒です。

――交流戦前の試合でリリーフに失敗し、石山投手はベンチ入りから外れました。その辺りの決断については、改めて次回伺います。交流戦が始まった現在の抱負、意気込みを最後にお聞かせください。

高津 個人的には、普段見ることのできない選手や、初めて対戦する相手監督の采配など、楽しみはたくさんあります。具体的に言えば、ソフトバンクのモイネロは近くで見てみたかったけど、オリンピック代表で離脱しているのが残念です。あとは、楽天の石井一久監督が、どんな采配をするのか注目しています。もちろん、勝ちます(笑)。

――ファンが「田中将大対村上宗隆」を楽しみにしているように、監督自身も夢の対決を楽しみにすることはあるんですか?

高津 もちろんありますよ。「マー君対ムネ」なんて、ベンチから見ていても楽しみだし、ヤス(奥川恭伸)と佐々木朗希の投げ合いなんて夢があるじゃないですか!

――いいですね。夢の対決ですね。でも、「奥川対佐々木」のマッチアップは、高津監督の采配次第では十分可能になりますよね。

高津 相手のあることなんで、何とも言えないけど、まぁ、見ていてくださいよ(笑)。いずれにしても、パ・リーグの胸を借りつつ、ファンの方にワクワクしてもらうような試合をして、きちんと勝利したいと思います。引き続き「応燕」よろしくお願いします!

 

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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