国分太一氏の求めた「答え合わせ」とは何だったのか?「コンプライアンス違反」「ハラスメント」…評価型社会の行き着く先にあるもの

2025.12.09 Wedge ONLINE

 過去にコンプライアンス上の問題が複数確認されたとして、芸能活動を無期限で休止しているタレントの国分太一氏が記者会見した。国分氏は、日本テレビによって自らに下された「コンプライアンス違反」という「評価」をめぐり、「答え合わせをしたい」と繰り返し述べた。

記者会見をした国分太一氏(産経新聞社)

 国分氏の記者会見については、テレビその他のマスコミでも広く報道された。これを受けて、他のタレントも発言をしている。SNSでも賛否両論があるようだ。

 読者の中にも、この「答え合わせ」という言葉に違和感を抱いた人も少なくないと思う。よく考えてみると、国分氏が実際にどのような言動を行ったのか、全くわからないのだ。「コンプライアンス違反」という「評価」だけが独り歩きをしている。

 こうした「評価」だけに興味や関心が向けられている状況は「評価型社会」とも言える。これは、日常生活を送る私たちにも影響を及ぼしかねない。法律家の目線から解説してみたい。

国分氏は何の「答え合わせ」を求めたのか

 報道によれば、国分氏に対しては、日本テレビが2025年6月、コンプライアンス違反の言動があったとの理由で、約30年出演していた番組『ザ!鉄腕!DASH!!』の降板を伝えた。その後、他のテレビ局でも国分氏の降板が続いた。

 法律家の世界では、"Think like a lawyer"という言葉がある。その最も初歩的な考えは次の2つである。

・「評価の対象」(以下、「対象」)と「対象の評価」(以下「評価」)を明確に区別すること

・まず「対象」を確定し、確定された内容をもとに「評価」を行うこと

 「コンプライアンス違反」というのはあくまでも「評価」である。国分氏が実際に行った何らかの言動について、コンプライアンス基準に違反したとの「評価」がくだされただけである。他方で、国分氏が実際に行った言動は、一部週刊誌が取り上げていたものの、詳細は明らかにされていない。

 国分氏が「答え合わせ」という言葉で求めたのは、まさに「コンプライアンス違反」という「評価」について、その「対象」となる日本テレビが確定した国分氏の言動を明らかにすることであったろう。

 「対象」と「評価」が十分に区別されず、「評価」であるはずの「コンプライアンス違反」があたかも「対象」であるかのように用いられているのだ。メディアも専ら「評価」のみを伝え、読者の興味や関心も「評価」だけに集まっている。

『フジテレビ事件』との共通点

 元タレントの中居正広氏とフジテレビとの一連の問題でも同様のことがあった。報道によれば、中居正広氏の代理人(弁護士)が、当時の中居氏の言動についてフジテレビの第三者委員会が「性暴力」という言葉を用いたことに対して強く抗議をした、とのことである。

国分氏と日本テレビの関係は、中居氏とフジテレビの関係とも近似する(Mirko Kuzmanovic/gettyimages)

 この「性暴力」という言葉も「評価」である。中居氏の代理人によれば、中居氏が実際に行った言動すなわち「対象」となった内容は、「性暴力」という言葉から受ける印象からかけ離れたものであった、とのことである。

 このケースでも、「対象」となる中居氏の言動は明らかにされていない。

 これらのケースにも共通するのは、「評価」である「コンプライアンス違反」や「性暴力」という言葉が独り歩きをしてしまい、「対象」である国分氏や中居氏の言動に目が向けられなくなっている状況である。国分氏も、中居氏の代理人も、この状況を何とかして打開しようと口を開いたと考えられる。

「コンプライアンス違反」という言葉に潜む問題点