2025年はクマの人里出没に振り回された1年だった。近年はシカやイノシシの獣害が問題になっていたが、人身被害を含むクマの出没は、日本の野生動物管理が抜き差しならない状況になってきたことを知らしめる役割を果たしたかと思う。
そして野生動物の管理にはハンターが欠かせない存在であることに気づかされた。獣害対策には「予防」も「防御」も重要だが、やはり最後の砦は「駆除」なのである。そのためにはハンターが欠かせない。だがハンターとはどんな立ち位置にあり、現状はどうなっているのか。その点をひもといてみた。
ハンターとは、一言で言えば狩猟免許を持っている人だ。その狩猟免許保持者は、減り続けているとされる。
だが推移をよく見ると、ここ10年ほどは反転している。12年度は約18万700人だったが、21年度は約21万3400人と増えた。ただし、免許は猟銃のほかワナ、網、空気銃も含む4種類の合計だ。重複取得もあるから実勢はもっと少ない。
また近年取得が増えているのはワナ免許であり、銃免許の取得者は8万4400人ぐらい。加えて実際の狩猟に必要な都道府県への狩猟登録は、約13万7000人(こちらも重複あり)と6割ほどにすぎない。免許はあるが、現場に出る機会を持たないペーパーハンターが多いのだ。
たしかに実質的なハンターは減っている。増えすぎた野生動物を駆除する人が減ったことが獣害を多発させたと考える声もある。
ただ、それほど単純ではない。
有害駆除数を見ると、驚くべき数字が並んでいる。1990年と2024年の駆除数を比べてみよう。シカは4万2000頭から73万8700頭へ、イノシシは7万200頭から63万3000頭へと急増している。クマにいたっては、90年代は保護政策がとられていたので、ヒグマ200頭、ツキノワグマ1500頭にすぎない。それが24年には826頭と4520頭。今年は10月末まででも8883頭と984頭である。
クマ両種合わせると年間で1万頭に届きそうだ。この10年間は、毎年5000頭以上駆除するが普通になっている。
30年あまりのうちに駆除数は激増したのだ。ハンター数が減っているのに、駆除数は増えるという逆転現象が起きていた。
そもそもハンター数は、75年に51万8000人だったから、現在は随分減ったように説明されるが、60年代は30万人前後、50年代は20万人を切っている。戦前はさらに少ない。30年代は10万人以下だった。
つまり「ハンターの減少」が、「野生動物の増加」と「獣害の増加」を招いたとは説明できない。むしろ少ない人数で多く駆除しており、ハンターは頑張っているのだ。
クマはともかく、シカやイノシシの駆除数が劇的に増えたのは、報奨金が増額されたことが大きい。かつてシカは1頭5000円くらいだったのが、最近では地域によっては2万円、3万円に達しており、しかも生息数が増加したから捕獲のチャンスも増えた。狩猟に精が出るわけだ。それが新規参入者も増やした。
だが、クマはそうはいかない。シカを撃ち損じてもハンターの身に危険はないが、クマだと逆襲される恐れが強い。それに比して報奨金や出動手当は安いと言われている。
しかも現在求められているのは、人里、とくに市街地に出てきたクマの駆除である。市街地における発砲は条件も厳しい。標的の後ろに人家などがなく、跳弾にならないよう柔らかい土などのバックストップが求められる。射撃技能面からも非常に難易度が高い。