高市政権の肝入り、日本のインテリジェンス強化へ政治家が果たすべき責務とは?

2026.02.03 Wedge ONLINE

 自民党の高市早苗政権は、日本維新の会との合意に基づき、インテリジェンス(情報活動)の分野においては、①国家情報局の創設、②スパイ防止法の制定、③対外インテリジェンスの強化を打ち出している。

高市早苗政権はインテリジェンスの重要性を理解し、国家戦略へ反映できるか(THE SANKEI SHIMBUN)

 ①については、一部法改正と組織再編成で対応可能だが、②・③については、新法制定と、法律の運用を行う組織が必要であり、導入までのハードルはかなり高いだろう。本稿ではスパイ防止法と対外インテリジェンス組織について検討していく。

 監視の対象は、日本国内の外国人となるが、闇雲に行っているわけではない。まず可能性が高いのは大使館や領事館に外交官の身分で赴任し、情報活動を行う情報員や軍人であるので、それら外交官が監視の対象となる。これらのスタッフは公館に勤務しているので、監視を行うのはそれほど難しくはない。

 問題は民間人に偽装しているスパイ(Non Official Cover:NOC)であり、彼らは普段、ジャーナリストや学者、企業の従業員の肩書で働いているが、本業は国家機関に所属する情報員である。NOCの場合は、誰がスパイなのか、そしてどこで勤務しているのかがわかり難いため、その監視は容易ではない。そのため欧米では、外国代理人登録法なるものが存在している。

 この種の法律では、米国の外国代理人登録法(FARA)がよく知られている。これは米国以外の国籍で、米国に在住し、外国勢力や団体の利益のために活動する者を外国人代理人と定義し、司法省に登録する制度である。このデータベースは国防総省にも共有され、監視の必要があれば、実際に連邦捜査局(FBI)などが監視活動を行うことになっている。また故意による登録の拒否、虚偽の登録などを行った場合は、罪を問える。

 他方、日本国内における諸外国の情報機関の監視は、警察庁、法務省公安調査庁、防衛省・自衛隊などが実施しているが、その監視手段は基本的に目視による監視と尾行であり、膨大な労力がかかる。一方で、欧米諸国では通信傍受による情報収集が基本である。ここでいう通信傍受とは、平時から情報収集のために行う行政傍受のことである。情報機関による行政傍受は、基本的に自国民に対して行うものではなく、スパイ活動を行う可能性のある外国人やテロリストに対して行っている。

 日本では行政傍受の導入については未だ議論の俎上にもない。行政傍受は個人のプライバシーが侵害される恐れがあるとして、日本国内の世論やマスメディアは慎重な姿勢を崩さない。また通信傍受の実施は、日本国憲法第21条2項の「通信の秘密」にも関わる事項であるため、広範な議論が必要になってくる。

 ただし、ここで通信傍受の対象となるのは、日本の秘密を非合法に得ようとする外国政府勢力、もしくは外国政府の利益のために働く外国エージェントが対象であるため、大部分の日本人にとっては直接的な影響はないだろう。基本的に調査機関が日本人の通信を傍受することは想定されていないが、もし外国人エージェントとの接触を認められた場合は、裁判所の許可を得て実施することも検討しなければならないだろう。欧米諸国においても基本的には自国民の通信を傍受することには厳しい制限がかかっている。 

 日本は戦後長らく、米国の中央情報庁(CIA)や英国の秘密情報部(MI6)に相当する、海外での人的情報収集活動を専門とする対外インテリジェンス組織を持たなかった。ただし2010年代には海外で邦人がテロリストに誘拐、殺害される事件が相次ぎ、それに対応するため15年に国際テロ情報収集ユニット(CTU−J)が設置されている。CTU−Jはテロ分野に特化しているため、警察官僚を中心に対外情報機関に拡大するような構想もある。