ロシアと中国が牛耳るベネズエラ、米国の“掌握”で石油はどこに行くのか?注目される「世界の製油所」インドの動き

2026.01.15 Wedge ONLINE

 米国のトランプ政権が2026年1月3日、ベネズエラで軍事作戦を実施し、マドゥロ大統領を拘束した。米国がベネズエラに関与する背景には、麻薬取引の撲滅に加え、豊富な石油資源の確保という狙いもある(山本隆三「日本のメディアが報じないベネズエラの石油にトランプがこだわる大きな理由 シェール革命では補えないアメリカ人に必須の「ある物」とは?」)。

(Bet_Noire/gettyimages)

 世界最大の石油埋蔵量を有するベネズエラの石油部門では、これまで中国が大きな存在感を示してきた。しかし、今後は米国が同国の石油資源に対する管理を強化していく見通しであり、それに伴う国際石油市場への影響や、ベネズエラ産原油の輸出先の変化が注目される。

石油権益を保有する中国とロシア

 現在、ベネズエラの石油埋蔵量に対する権益(entitlement)を主に保有している外国企業は、主に中国とロシアの国営企業である。各社が契約に基づいて直接販売・収益化可能な石油権益を見ると、中国のシノペック・グループが最大の28億バレルを保有しており、ロシアのロスザルベジネフチが23億バレル、中国の中国石油天然気集団(CNPC)が16億バレルで続く(図1)。

 なお、各社が保有する石油権益は、ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)が保有する2000億バレル超の埋蔵量に比べれば、規模は小さい。

 中国は07年、チャベス政権下でインフラ開発および石油プロジェクト向けの融資を開始した。これらの融資は石油を担保に、国営銀行を通じて実行され、15年までに累計600億ドル以上が貸し付けられたと推計される。その結果、中国はベネズエラにとって最大の債権国となった。

 同時に、米国による対ベネズエラ制裁が強化される中、中国はベネズエラ産原油の最大の輸出先にもなった。CNPCや中国海洋石油(CNOOC)は、埋蔵量の大半の油田が集まるオリノコ重質原油地帯を含む主要油田で資源開発を進め、さらにベネズエラ国内の精製・石油化学施設への投資も拡大した。こうして、中国はベネズエラの石油供給網全体に深く関与するようになった。

 また、ロシア企業の存在も際立っている。ロスザルベジネフチはロシア国営のザルベジネフチが20年に設立した子会社である。同社は、米国がロシアの石油大手ロスネフチのベネズエラの2事業に制裁を科したことを受け、資産を引き継ぐ形で設立された。その目的は、米国の制裁を回避しつつ、ロシアのベネズエラ石油資産の運用を継続することにあった。

 ベネズエラ国会は25年11月、PDVSAとロスザルベジネフチとの合弁事業について、15年間の延長を正式に承認した。これにより、ロシアはボケロン(Boqueron)油田およびペリハ(Perija)油田の運営に41年まで関与を継続することが可能となった。延長後の総生産目標は約9100万バレル、日量平均で約1万6600バレルと見積もられていた。

トランプの狙い

 ベネズエラの石油部門は、インフラの老朽化や長期的な投資不足により、産油量の回復には数年を要するとの見方が広がっている。これに対し、トランプ政権は、米国の政策次第で石油部門の再活性化は迅速に可能だと主張している。

 同政権は、ベネズエラでの原油生産を最大化する手段として、過去に課した制裁――米国企業による油田設備や技術の供与を禁じた措置――の解除を挙げている。また、トランプ大統領は、米国企業が補助金を受ければ、1年半以内にベネズエラでの操業拡大が可能だと訴えている。

 現在、米国石油企業の中でシェブロンのみが、ベネズエラの油田で操業を継続している。一方、エクソンモービルやコノコフィリップスは、かつて同国の主要な生産者であったが、およそ20年前に事業が国有化されて以降は撤退している。

オススメ記事

まだ記事はありません。