南鳥島が放射性廃棄物の最終処分場になるための課題は何か?動き出した文献調査、見落としてはいけない離島に住む人々の生活

2026.04.03 Wedge ONLINE

 経済産業省は原子力発電所から出る高レベル廃棄物の最終処分場選定にあたって南鳥島を文献調査の対象とすることを小笠原村に申し入れ、父島と母島で住民に対する説明会を実施した。小笠原村の渋谷正昭村長が13日に自身の考え方を村民向け説明会で伝えることを明らかにしている。

(Chief Master Sergeant Don Sutherland, U.S. Air Force, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で)

 これについてのマスメディアの報道を見ると、都民が使う柏崎刈羽原子力発電所6号機(新潟県)が稼働し始める時であるし、南鳥島は国有地だから都は反対しにくいだろう、といった記事が目立つ。離島問題の本質に理解が乏しいことが感じられる。

離島に人が住むため何が必要か

 日本より国土面積の広い国は世界に60以上あるが排他的経済水域ではアメリカ、フランス、オーストラリア、ロシア、カナダなどに次ぎ日本はトップクラスの広さ、国土面積の約12倍を有している。漁業資源、海底資源等の面において国際的に有利かつ重要な位置にいる。

 中でも東京都は多くの島を持っているため、日本の経済水域の約40%が都に属している。南鳥島は他の島による排他的経済水域と重なることがないためこれだけでも相当に広大な面積となる。

 東京都に属する島は635もあるが、このうち人が住んでいる島はたったの11しかない。人が離島に住むということは大変なことである。水はどうする、食料は、そして電気・通信の設備は、子どもの教育は、さらに医療だ。

 たとえば2000年の噴火で有名になった三宅島には現在2100人余の人が住んでいる。島には診療所があって医師もいるが、重い病気になった時は都立広尾病院が中心となって三宅島をはじめ伊豆諸島および小笠原諸島の救急患者受入、画像電送による診療支援、医師派遣などを行っている。

 広尾病院屋上にはヘリポートも設置されている。しかしヘリコプターは天候が悪ければ飛ぶこともできない。そういう時は船も欠航となる。そもそも日常的に通院することは不可能に近い。

 島に住むことによる生活上の問題は医療だけではない。漁業や農業による生産物を運ぶには経費がかかる。だから単価の高い物を生産するほかはない。船の欠航が相次ぐと出荷も順番待ちとなってしまい、市場で値がつくチャンスを逃してしまう。

南鳥島を処分場とするための課題

 離島は波に洗われ土も風に飛ばされる。放置すれば消滅していく可能性がある。人が住んで初めて維持される。南鳥島は本土からは南東に約1800キロメートル(㎞)、小笠原諸島の村役場が置かれている父島からでも東南東に1200㎞以上離れている。

 南鳥島の面積は1.51平行キロメートル(㎢)。現在置かれているのは国の自衛隊や国土交通省(港湾)、気象観測の施設である。1370メートルの滑走路と港湾施設がある。入間基地から航空自衛隊の飛行機で約3時間半かかる。

 南鳥島に放射性廃棄物を処分するためには安全に輸送するための施設を整備しなければならない。廃棄物は地下300メートル(m)以下の安定した地盤に埋めることになる。

 これから行われる文献調査では既存のデータをもとにそういう島の地下に処分することの可能性や安全性が検討されるだろう。仮に第2段階の概要調査(ボーリング調査などが行われるだろう)に進むとすれば、今回のような村長の同意だけでなく東京都知事の同意が必要となる。

 政府は今回の小笠原村への申し入れに先立って1月に「放射性廃棄物の処分場調査については電力消費地も協力するよう」各都道府県に通知を出している。東京都が一大電力消費地だから南鳥島に、という関連性はあまり感じられないが、第2段階の概要調査に対して東京都が賛否を決めるためには問題の本質を都民に十分周知しなければならない。