AI技術の発達で診療はどうなる?最新研究から見るAI汎用化時代の医療、家庭医にしかできない役割とは

2026.04.06 Wedge ONLINE

 熟練の機械工であるK.M.さんには「AIによる予測」が武器になった。単なる脅しではなく、客観的なデータを用いて「父親が健康でいることの戦略的価値」を伝えることに成功した。それが、73歳にもなるのにスマートフォンの使い方を覚えてくれて、健康アプリを使うことのインセンティブになったのだ。

 「K.M.さん、AIの予測では、今無理を重ねると半年以内にあなたが倒れる可能性が高い。そうなれば、N.M.さんを守る人がいなくなってしまいます」

 並行して、家庭医のネットワークを使って、ソーシャルワーカー(社会福祉士)と連携して地域の発達障害支援センターや障害者就労支援センターなどへの紹介ができたことも、やがてN.M.さんにやってくる自立への促しとK.M.さんにとっての安心になるだろう。

 ちなみに、近未来ではない現在においては、日本で使用できる健康アプリの質は玉石混交で、保険診療の対象となる(医師の処方に基づいて使用する)ものは、高血圧とニコチン依存症の2つのみである。心血管リスク軽減のための行動変容やメンタルヘルスの非薬物療法など、有益性と費用対効果に優れた健康アプリがあっても、より高額な薬物療法が優先的に保険診療の対象となる傾向があることは残念である。