2026年GWで明らかに…観光産業で起きている大きな変化、数字から見える消費傾向、国内旅行者が求めていることとは?

2026.05.11 Wedge ONLINE

 さらに見逃せないのは、国内旅行も決して安くはないという現実である。宿泊料金はコロナ前に比べて上昇し、都市部や人気観光地では繁忙期に1泊1万5000円から2万円台が一般的になっている。

 旅行者は今、「海外は高すぎるが、国内も安くはない」という二重の制約の中にいる。その結果、意思決定の軸は大きく変わった。

 もはや「海外か国内か」という二択ではない。同じ予算を使うなら、どこでどのような時間を過ごせば最も満足できるか。旅行は、場所を選ぶ行為から、時間の使い方を設計する行為へと変化しているのである。

高齢化がもたらす国内旅行需要の変化

 国内観光を考える上で、避けて通れない論点がある。旅行者の年齢構成である。現在の国内旅行は、少なからず高齢層に支えられている。時間的余裕があり、宿泊を伴う旅行にも慣れているこの世代は、温泉や周遊、団体旅行といった従来型の観光スタイルと親和性が高い。

 一方で、若年層の行動は大きく異なる。若者は決して移動していないわけではない。むしろ活発に動いている。ただし、その目的が変わっている。

 ライブやイベントへの遠征、いわゆる「推し活」、サウナやアウトドア、カフェ巡りや街歩きなど、テーマや体験を起点とした短時間の移動が中心である。つまり、若者は「旅行しない」のではない。従来の観光産業や統計が想定してきた「旅行」とは異なる形で動いているのである。

 ここに見過ごせないリスクがある。高齢層が今後さらに高齢化すれば、長距離や宿泊を伴う旅行の頻度は自然に低下していく。その時、若い世代が同じ旅行行動を引き継がなければ、国内観光はなだらかに縮小するのではなく、ある時点で段差的に落ち込む可能性がある。

 問題は人口減少そのものではない。旅行行動が世代間で継承されていないことである。したがって、国内観光を「安定した基盤市場」として捉えるだけでは不十分である。若年層や現役世代の新しい移動行動を取り込めるかどうかによって、その将来は大きく左右される。

 ここで「非日常」と「生活拡張」という二つの観光が同時に存在している。こうした変化を踏まえると、日本の観光を「国内回帰」として捉えるのは適切ではない。むしろ起きているのは「国内再編」である。

 現在の日本の観光産業は、異なる論理で動く二つの市場を同時に抱えている。一つはインバウンドである。訪日客の消費は、距離も支出も大きい「非日常消費」であり、高い成長性を持つ。一方で、為替や国際情勢、航空供給など外部環境に強く依存するという不安定さも併せ持つ。

 もう一つが国内旅行である。こちらは近距離・短期間・目的重視という特徴を持ち、食事や休養、家族との時間といった日常の延長に位置づけられる。国内旅行は「観光」というより、生活を少し広げるための移動、すなわち「生活拡張消費」と捉える方が実態に近い。

 この二つは同じ観光産業の中にありながら、全く異なる行動原理で動いている。それにもかかわらず、これまでの政策や投資は、訪日客数の拡大と単価上昇を前提とした「インバウンド受け皿」として設計されてきた。

 国内観光は、インバウンドの補完でも余剰の受け皿でもない。それは、日本の観光産業にとっての戦略需要であり、揺るがない基盤である。だからこそ今、求められているのは、国内とインバウンドを分断して考えることではない。それぞれの特性を踏まえた上で、観光全体の構造を再設計する視点である。

「体験価値」の再定義──モノから意味へ、解像度の高い体験

 このような「生活拡張消費」を求める国内旅行者は、一体何を求めているのか。最新の調査によれば、今年のGWのキーワードは「大自然」「解放感」「心のリフレッシュ」であった。これは、従来の「名所巡り」「宿泊」「買い物」といった典型的な「パッケージ型」からの決別を示している。