活況呈する中古スマホ市場で起きている静かな危機…供給不足が深刻化する未来、日本人が買えなくなる日

2026.06.25 Wedge ONLINE

 市場全体にはどのような影響をもたらすのか。中古市場に詳しい慶應義塾大学商学部教授の山本晶氏は次のように話す。

 「中古品は一般的に新品より安いため、物価の下押し因子となり得る。また、メーカーの終売品も買えるようになるため、選択肢が増えるというメリットがある。一方で、これまで買い手専門だった消費者が売り手にもなるため、売ることを意識してより高い買い物をするなど、新品の購買の後押しにもつながる。まだまだ伸びしろがあるのが中古市場だ」

中古スマホの流通チャネル
情報漏洩リスクはないのか?

 中古スマホの流通事情を深掘りするべく、中間業者にも取材した。Belong(東京都港区)は伊藤忠商事の社内ベンチャーとして19年に設立された中古スマホ・タブレットの買取販売業者だ。自社で端末の検査やデータ消去を一括して行う。卸売業者・メーカー・小売業者など、仕入・販売の両方で様々なチャネルが想定されるが、Belongは中古スマホの商社として「全て」のチャネルで事業を展開しているという。代表取締役社長の西村耕一郎氏は、設立趣旨をこう語る。

 「米国では中古スマホ市場が活発化しており、日本も同様に市場が伸びると予想されたため設立した。市場の拡大は、個人間取引が増えたことや、消費者の間で中古品への抵抗感が薄れていることも背景にある。販売サイト『にこスマ』は、各端末のバッテリー容量や外装の詳細を一つひとつ開示するなど、消費者の不安を取り除いているのが特徴だ」

 しかし、スマホに保存されている個人情報などの漏洩リスクはないのか。取材を通じて判明したのは、各社が主にBlancco社のデータ消去ソフトウエアを使用していることだった。同社は1997年にフィンランドで設立し、後にスマホ用のソフトウエアを開発。日本国内では2010年に中古情報機器等のオークション事業等を展開するオークネットとの共同出資でブランコ・ジャパンを設立した。代表取締役社長の三松基氏は、データを消去する仕組みについてこのように語る。

 「データ消去ソフトウエアを導入したPCと対象のスマホをつなぐと、端末を出荷前の状況に戻すことが可能だ。原理的にデータを消去する仕組みで、消去後にデータの破片が残ることはなく、復元も不可能だ」

 日本では早くから拠点を構えていたこともあり、同ソリューションで、自社調べでは国内シェア7~8割を獲得した。

 多くの企業と関わる三松氏から、中古スマホ市場について気になる話を聞いた。「取引がある企業に限られるが、推計で年間約750万台の中古スマホが海外の企業やユーザーに販売されている」というのだ。一体どういうことか。ゲオなどの小売業者が加盟する業界団体、リユースモバイル・ジャパン(RMJ)理事長の有馬知英氏は海外の中古スマホ事情について次のように話す。

 「キャリアは下取りの仕組みなどを使用して、年間600万~700万台の中古スマホを回収し、RMJの加盟団体は200万台超を回収している。一部の中古スマホは回収した企業が再販し、他は商社などを通じて海外に輸出していることが多い」

 冒頭にも触れたが、国内で出荷されるスマホは年間約3000万台。そして、キャリアが年間600万~700万台、RMJの加盟団体が200万台超を回収する。回収された中古スマホは国内で約300万台販売される一方、約750万台が輸出されているようだ。前出の三松氏は言う。

 「昨今の円安もあり、日本よりも高い値段で買い取ってくれることがある。中古スマホの価値の変動は激しく、在庫を持つことはリスクにもなりうる。日本で安く買って、海外で高く売ることは、ある意味で、資本主義の動きではある」