「新しい競技」と分類されるスポーツが躍進を続けている。ここまで人気を集める理由と、そこから広がる未来を取材した。
「競技に触れる人が増えれば、そのおもしろさが分かる『観る人』も増える。するとスポンサーが参入し始め、やがてプロが育ち、ジュニア層への投資が増え、道具が売れて教育施設も充実して……。歯車が回り出せば、名もなきスポーツは一つの『産業』に成長していくのです」
期待を込めてそう語ってくれたのは、ピックルボールワン代表取締役の熊倉周作さんだ。
ピックルボールとはどんな競技か。一見テニスに似ているが、コートのサイズはバドミントンと同じ。プラスチック素材のボールには穴が空いており、羽子板のような形状のラケットは「パドル」と呼ばれる。
もともとテニスの世界ランカーだった熊倉さん。彼が語るピックルボールの奥深さには説得力があった。
「経験者と素人が戦う時、テニスではなかなか成立しません。経験者は思い切り打てないし、相手のサーブは入らずにラリーも続かない。でも、ピックルボールは『おもしろい』。穴が空いたボールは空気を通して失速します。つまり、球の速さが強さにも比例するテニスとは違うんです。たとえ実力差があっても、それがプレーの内容には如実に反映されない。だからこそ戦略が生きるし、親しみやすくもあるのだと思います」
部活由来のスポーツではないことも大きい。ピックルボールは多くの人が初めて触れる競技だ。試合中にコートを走り回ることも少なく、老若男女が楽しめるスポーツとして世界中で人気に火がついており、「その参入のしやすさはむしろ、ランニングやゴルフに近い」(熊倉さん)。
ただ、熊倉さんを突き動かした〝本当のおもしろさ〟は別にあるという。
2024年、熊倉さんが米国の西海岸で本場のピックルボールを見た時のこと。パドルを持ってコートを訪れると、そこでは「オープンプレー」と呼ばれる時間帯が設けられていた。グループで施設を貸し切るのではなく、その場で出会った人と自由にペアを組み、共にプレーを楽しむのだ。
「まるでオンラインゲームの『リアル版』のような光景でした。これこそが、ピックルボールの文化なんです。誰とでも気軽につながれる世界を日本にもつくれれば、人々はもっと幸せになれるはずです」
ピックルボールワンは世界大会の企画運営や専用コートの運営、グッズ販売などを手掛ける。メディア露出も増え、国内の競技人口は一昨年に約1万人、昨年には約4.5万人、今年7月時点では約33万人と、うなぎのぼりだ。熊倉さんは言う。
「喫緊の課題はコート数の少なさです。人工芝のテニスコートはピックルボールのコートに簡単には転用できない事情もあります。だからこそまずはプレーできる環境を整える。『産業』としての歯車はそこから回り始めます。こんな瞬間に立ち会えるのは、100年に一度あるかどうか。そんな私は幸せ者です」
20年、世界初のプロダンスリーグ「Dリーグ」が日本で発足した。
「メジャーカルチャー、あるいは社会そのものへの反発心、ダンサーの〝とがった〟エネルギーをうまくビジネスに昇華できた」