クローズドな世界に「バブル化する」就活戦線

優秀な少人数の学生のみに限定したセミナーやコミュニティーが増えている (写真:foly/PIXTA)

就活が「バブル化」している――。

といっても、景気が良かった時代の「バブル」ではない。オリンピックなどのスポーツ競技で行われた、選手と一般の人との接触を遮断する「バブル方式」「レースバブル」のように小さなグループに分かれる状況を指す。

この傾向は、新型コロナウイルスの流行とともに広がり、そして新たな課題を生み出している。

一斉登録が当たり前だった「コロナ前」の就活

そもそも、就活は従来、どういうものだっただろうか。ネットが一般化する前は、大学へ届く紙の求人票を見て、企業へ応募するのが一般的だった。企業は狙った大学の学生だけを雇用することが可能であった。また、学生は履歴書を手書きで記入しながら、好景気の時期も不景気の時期も乗り越えていた。

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一気に変わったのはインターネットが普及してからだ。1996年に「RECRUIT BOOK on the Net」として現在のリクナビがサービスを開始し、2000年代にはオンラインでの企業応募が一般化していった。

それからは、大量エントリーの時代が始まる。オンラインであれば、コピー&ペーストで同じ文章を何社にも提出できる。また、求人票では目にすることができなかった、知りようがなかった企業情報にも公平にアクセスできる。そうして数十社、中には100社以上エントリーする「椅子取りゲーム型」の就活が一般化した。

大量エントリーができても、企業が出せる内定の数は同じだ。そこでCMなどで知られる有名企業へ人気が集中し、高倍率化している。『就職四季報総合版』の最新データ(2023年卒版)によると、雪印メグミルク482倍、東宝420倍など、高倍率の企業は多い。

新型コロナウイルスが流行する前は、JTBやH.I.Sなどの旅行業、JAL、ANA等の航空会社、そしてオリエンタルランドなどテーマーパーク施設も就活生の人気企業ランキング常連だった。また、学生に知ってもらうため、エントリーが集中する時期にCMを出す企業も出てきた。

情報格差が生まれだす2010年代

大量に応募が届く有名企業は、選考に大量のリソースを割かねばならない。一方、就活生は高倍率の企業に落ちる前提、「ダメ元応募」を強いられる。

<有名企業ばかり倍率が上がる、一斉応募は非効率ではないか?>

そう、疑問を抱いたのは、企業や就活生だけではなかった。就活情報サービスの「外資就活ドットコム」などをはじめ、高学歴や外資志望者など、限られた層へアプローチするサービスが生まれ始めた。

「就活生」と大卒の40万人をひとくくりにするのではなく、細分化されたニーズがあるだろう……という判断だ。この読みは当たり、学生たちの間から高い支持を得ている。外資就活ドットコムの運営会社、ハウテレビジョンも2019年に上場を果たした。

さらに、就活予備校ともいえる「選抜コミュニティ」が登場した。学生を面接などで査定し、優秀な学生のみ選抜して就活法を指導する団体だ。学生はクローズドな空間でマンツーマンの指導を受けられたり、エントリーシート(志願書)の添削を受けられたりする。トップ大学の生徒が集まりやすいこともあり、選抜コミュニティは都心部で人気となっている。

選抜コミュニティは、個人が善意で行っているケースもあれば、就活エージェント会社や就活サービス会社が運営していることもある。会社が運営する場合、学生は無料で指導を受けられることがほとんど。優秀な学生を輩出することで自社のブランドイメージを高められるからだ。