ソフトバンク、行き詰まり、財務内容へ懸念広がる…投資先企業の経営が急速に同時悪化

 その後、SBGは金融支援やウィー社への経営陣の派遣を行い、経営再建にコミットした。見方によっては、SBGにとってウィー社への投資負担が大きく、投資資金を回収しようにも簡単にはいかない状況に陥ってしまった可能性がある。

 その上、2020年1月以降、新型コロナウイルスの感染が世界的に広まった。世界全体で需要と供給が大きく低下し、金融市場では株式、債券をはじめ価格変動リスクのある資産への投げ売りが起きた。これは、SBGにとって想定外の展開だろう。

 SBGは市場環境の急変に対応するために、複数の対策を発動した。4.5兆円規模の資産売却や自社株の買い取りがすでに発表されている。また、一時、同社は非上場化まで検討していたと報じられた。実現の可否は別にして、非上場化はステークホルダーの数を減らすことで迅速な利害の調整を目指し、抜本的な改革を進めるために重要な手段ではある。経営環境の急変に対する危機感はかなり強い。

 同時に、投資先企業のなかには経営破綻に陥る企業が出始めた。3月27日には、SBGが50%程度の株式(金額にして約2000億円)を保有するとみられる通信衛星企業のワンウェブが米連邦破産法11条(チャプター11)を申請した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響から金融市場が混乱し、同社は資金調達を続けることが難しくなってしまった。

先行き懸念高まる収益・財務内容

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界経済の先行きは非常に読みづらくなった。ワンウェブは通信衛星を打ち上げることによって通信サービスの提供を目指した企業だ。新型コロナウイルスの感染が広まるまで、5Gをはじめとする高速通信サービスの普及は、世界経済の成長を支える一つの原動力として市場参加者の関心を集めた。そうした見方が維持できなくなるほど、新型コロナウイルスは世界全体で人の移動を寸断し、需要と供給を落ち込ませている。

 今後の焦点は、どの程度の期間で感染が収まるかだ。いつそうなるかが、かなり見通しづらい。短期間で日米欧など世界各国の感染が収束し、人々の日常生活が通常に戻ればよいが、各国の状況を見ていると楽観できない。世界経済がかなり混乱する可能性は高まっている。

 今後の展開に次第では、収益と財務内容の両面でSBGはさらなるリスクに直面するだろう。追加の資産売却など、同社の事業内容が縮小均衡に向かう可能性は高まりつつある。世界的な需給の寸断を受け、各国の企業業績の悪化は避けられない。すでに財務内容が悪化してきたウィー社のようなケースにおいては、市場参加者のリスク削減などの影響を受け、資産を売却しても資金繰りが追い付かなくなる恐れがある。

 他のSBGの出資先に関しても、ネットワークテクノロジーを用いてグローバルな人の移動(動線)を整備し、そこから付加価値を得ようとしてきた企業が多い。感染対策のために各国が国境を封鎖し、主要都市の封鎖までもが増えている。民泊やライドシェアをはじめITを用いた需給のマッチングによって付加価値を目指してきた企業が付加価値を生み出すことは難しくなっている。それはSBGにとって大きなリスクといえる。

 また、SBGは大手銀行などからの借入によって投資を積み増してきた。SBGの経営体力の低下は、国内の大手金融機関の業績などにも無視できない影響を与える。どのように経営体力を維持するか、SBGは正念場を迎えていると考えられる。孫氏を中心に同社がリスクにどう対応して利害関係者との関係の維持・強化を目指すかに注目が集まるだろう。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)