テレワーク普及、国内で1.3兆円程度の特需出現との試算…削がれる需要や雇用者報酬も

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現時点までの潜在直接需要も含めれば1.9兆円

 さらにパーソル研究所の調査では、勤務先からテレワークを命じられている人が13.7%、推奨されている人が30.6%だったことからすれば、仮に推奨・命令を合わせた40.7%の勤務先で普及すると仮定すれば、テレワーク導入に伴うマクロ的な特需は約1.9兆円程度が見込める計算となる。

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(出所)パーソル総合研究所

 以上のように算出された直接需要額(それぞれ約1.3、1.9 兆円)から、総務省の産業連関表(2015年)を用いて、関連のある産業への間接波及額も含めた生産誘発額を試算(インターネット付随サービスの生産誘発係数を使用)してみると、その額はそれぞれ約3.0、4.4兆円と計算される。また、同様に産業連関表を用いて、部門別の粗付加価額/国内生産額をもとに付加価値誘発額を試算すると、その額はそれぞれ約1.2、1.8兆円程度となる。この額は、名目GDP比ではそれぞれ約0.2、0.3%程度に相当する。

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テレワーク導入に逆に削がれる需要もある

 しかし、以上の試算については幅を持ってみる必要がある。というのも、今回は規模が不透明なため考慮していないが、上振れ要因として、パソコン、タブレット、VPNルーター等機器の購入・設置・設定・保守・導入運用サポート・リース費が生じることが考えられる。

 一方、テレワークで削減されるコストもある。例えば、在宅勤務に伴い通勤費を削減できる。また、在宅勤務により出勤者が減少した場合やモバイルワークを導入してフリーアドレスを導入すれば、オフィス賃料や光熱費が削減できる可能性がある。さらに、育児・介護理由やパートナーの転勤・結婚など引っ越しによる退職を在宅勤務で防げれば、採用・教育費も削減される可能性がある。そのほか、訪問先近辺のシェアオフィスでモバイルワークをしてそのまま帰宅したり、会社に戻らず訪問先から直帰して自宅でその後の仕事を行うと交通費や残業代が削減され、拠点間でWeb会議を導入すると出張費を削減することもできる。

 しかし、これらはいずれも交通・外食・宿泊関連産業の需要や雇用者報酬などを削ぐ可能性がある。つまり、テレワーク推進に伴い関連分野に限れば一定の需要拡大効果は見込めるものの、交通・外食・宿泊や光熱・水道、不動産関連等の需要が奪われれば、ミクロ的な企業経営の視点では生産性向上につながるかもしれないが、マクロ的にはただでさえコロナショックにより大幅な拡大が予想されるデフレギャップのさらなる拡大要因となり、デフレ圧力を増幅しかねないものと思われる。

 したがって、テレワーク導入推進による生産性向上策は、新型コロナウイルスの対策としても不可欠であるが、それを推進するにはそれ相応の生活保障策や、コロナ終息後の需要喚起策もセットで行われることが不可欠といえよう。

 最後に、試算は多くの前提、推測を元に算出してあり、特需の規模も振れることが考えられることを付け加えておく。

(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

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