あらゆるスキマ時間で集中学習! 無駄ゼロ独学術

多忙でも資格試験に合格する人がしている「通勤中の勉強法」

Getty Images

キャリアアップ、資格試験、公務員試験、TOEIC、リスキリングなどにおいて、予備校や専門学校に頼らず一人で勉強するのはうまくいかないものです。いわゆる「独学」が難しいといわれる理由は――人間の意志がそもそも弱いからです。ただし、人間の意志は弱いという事実を受け入れることで、独学の成功率を高めることができます。
この連載をまとめ、加筆・改稿したビジネス書『意志の力に頼らないすごい独学術』(石動龍)が、アルファポリスより好評発売中です。

移動中にできる勉強とは

資格試験の勉強には、テキストを読んで内容を理解するインプットと、理解した内容を使って問題を解くアウトプットがあります。言うまでもなく、移動中にできることは限られています。
このうち、インプットに該当する、テキストや法律を読むことは可能です。また、アウトプットとしては、択一問題を解いたり、文章で解答する種類の理論問題に取り組んだりすることもできます。
一方で、計算問題を解くことは難しいです。
というわけで、移動時間はインプットや理論問題を中心に取り組みましょう。

インプットの精度を上げる

インプットの大前提は、覚えることではなく理解することです。
難易度が高くなるほど、試験範囲は膨大になり、これらの内容をすべて覚えることは不可能です。また、暗記に頼って趣旨や前提にある考え方をわかっていないと、問われ方の角度が変わった応用問題に対応できない可能性があります。
そして、テキストは漫然と読んでいても理解できません。内容を頭の中でかみ砕きつつ、少しずつわかりやすい言葉に変換していくことが求められます。
最終的に、内容を自分の言葉で表現できるようになれば、その論点は理解したと言えるでしょう。

膨大な試験範囲に対応するには、記憶の中に目次をつくることが大切です。
テキストや条文の順序どおりに覚えることは必要ありません。特定の論点について、どのあたりに内容が書いてあって、ほかの論点とどのように関係するかを、自分なりに整理することが目標になります。
問題を見た瞬間に、「これはあの辺に書いてあったな~」と思い出せれば十分です。そうすると、問われている内容を記憶から取り出しやすいので、解答にかける時間を減らすことができます。
試験本番までに、自分なりの目次をつくり、瞬時に記憶を取り出せるようになることを目標にしましょう。

やるべき勉強を取捨選択する

また、資格試験の種類によっても、インプットの精度を変えるべきです。私が受験したものでも、試験によって合格水準が異なります。
たとえば、行政書士試験は絶対評価です。科目ごとに足切り基準が設定されるほか、試験全体の得点が、300点満点中180点以上を取ることが条件になります。つまり、6割の問題に正解すれば合格できることになります。
それに対し、司法書士試験や公認会計士試験は相対評価です。どちらも、受験生全体の得点によって、合格基準点が変わります。
そのなかで、司法書士試験は比較的高い正答率が求められます。最近は受験者が減少傾向にあり、難易度が落ちているような印象ですが、私が受験していた2013年前後までは、択一試験では9割近く正解しないと合格が難しい状況でした。実際、私が合格したときは、午前午後とも、35問中32問正解しました。これでも、合格者の中では上位ではなかったので、精度の高い知識が求められていたことがわかります。
一方、公認会計士試験のうち、二次試験にあたる論文式試験は、年度や科目によっても異なりますが、体感では、半分ほどの問題に正答できれば、合格者の平均とそう変わらないような印象です。詳細な採点基準は公表されないので正確なことはわかりませんが、少なくとも2~3割の問題に不正解であっても、合格は可能であるように思います。

このように、資格試験とひと口にいっても、正答すべき問題の割合が異なります。そうすると、求められる知識の精度も変わるので、勉強方法にも影響します。高い正答率を求められる試験であれば、試験範囲のなかで捨てる論点をつくることは難しくなります。1問の失点が合否に大きく影響するからです。
逆に、それほど高い正答率を求められない試験であれば、出題可能性が低いと判断する特定の論点については、まったく勉強しない選択も考えられるでしょう。万が一、その分野から出題があっても、他の問題に時間をかけてカバーすることが可能だからです。

試験の傾向をつかみ、取捨選択を行ったうえで、移動時間のインプットを行いましょう。事前にこれを行うと、本番までに求められるレベルを把握することができます。そうすると、必要な知識の精度もわかりますし、捨てる論点があればほかの頻出論点に時間をかけることができます。

独学の社会人受験生には時間がありません。よほど頭のよい人でなければ、1回テキストを読んだり、問題を解いたりしただけで、論点を理解することはできません。
知識を自分の血肉にするためには、同じところを何度も何度も繰り返し読み、同じ問題を解いて、自分の言葉で説明できるようにすることが必要です。なぜそのようなルールになっているかの背景を考えながらテキストを読みこむと、理解が早まるでしょう。

ご感想はこちら

プロフィール

石動龍
石動龍

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。石動総合会計法務事務所代表。ドラゴンラーメン(八戸市)元店長、ワイン専門店vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。

著書

意志の力に頼らないすごい独学術

意志の力に頼らないすごい独学術

石動龍 /
キャリアアップ、資格試験、公務員試験、TOEIC、リスキリングなどにおいて、予備...
出版をご希望の方へ

公式連載