東京ディズニーリゾートの“ドン”君臨、85歳・会長退任せず…社長交代人事に驚き走る

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「gettyimages」より

 東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランド(OLC)の2021年3月期の連結決算は、最終損益が541億円の赤字(20年3月期は622億円の黒字)に転落した。新型コロナの直撃を受け、1996年に東京証券取引所に上場以来、初の赤字決算となった。

 年間入園者数は前期比73.9%減の756万人。東京ディズニーランドが開業した83年度の993万人を下回り、過去最低となった。2020年4~6月は全面的に休園。その後も入園者数の制限を続けている。売上高は前期比63.3%減の1705億円、営業損益は459億円の赤字(同968億円の黒字)。東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)の両テーマパークの入園者数の激減が痛手となった。

 主力のテーマパーク事業は売上高が同65.0%減の1342億円、営業損益段階で419億円の赤字(同796億円の黒字)。ディズニーアンバサダーホテルなど4つのディズニーホテルを運営するホテル事業は売上高が56.5%減の286億円、営業損益は19億円の赤字(同147億円の黒字)。モノレールなどのその他の事業も軒並み収入が半減した。

 臨時休園にともなう129億円の損失やホテル事業での56億円の減損損失を特別損失として計上した。役員報酬や社員の冬のボーナスを減らしたほか、イベント中止などで経費を655億円カットしたが、それでも赤字は回避できなかった。年間配当は18円減の26円とした。

 緊急事態宣言に準じる「まん延防止等重点措置」の対象に、テーマパークのある千葉県浦安市もなっており、来場人数の上限を各テーマパークとも、それぞれ5000人以下にするなど、入場制限は強化されている。22年3月期については「現状では正確な見通しが立てられない」として未定とした。

吉田謙次常務執行役員が社長に昇格

 12年ぶりに社長が交代する。上西京一郎社長兼最高執行責任者(COO、63)が特別顧問に退き、吉田謙次常務執行役員(60)が6月29日付で社長に昇格する。加賀見俊夫会長兼最高経営責任者(CEO、85)は続投する。

 OLCの首脳人事は驚きをもって迎えられた。前任の上西社長が63歳なのに対して、吉田新社長は60歳と3歳差。上西氏が12年前に社長就任したことを考えると、ほとんど若返りになっていない。社長を退任後は会長に就くのが一般的だが、上西氏は特別顧問になって経営から完全に退く。

 一方で、OLCの“ドン”といわれる加賀見氏は会長兼CEOのまま。加賀見体制は不変だ。加賀見氏は1958年に慶應義塾大学卒業後、京成電鉄に入社。72年に出向先のオリエンタルランドに正式入社した草創期からのメンバーの一人である。不動産事業部長や開発室長、広報室長などを歴任。95年に代表取締役社長、2005年に代表取締役会長兼CEOに就任した。

 この間、1983年の東京ディズニーランド、2001年の東京ディズニーシーの開園に尽力。年間3000万人を超える来場者を誇る国内ナンバーワンのテーマパークに育て上げた。政官財界に幅広い人脈を持ち、OLCの“帝王”として君臨している。

 吉田新社長は法政大学経済学部を卒業、1984年、オリエンタルランドに入社。経理部長を経て、2017年4月からTDLやTDSのレストラン等の料飲部門を管轄するフード本部長を務めた。20年4月、TDSで新エリアを開発する第8テーマポート推進本部長に就いた。新社長就任に合わせて社外取締役を1名増員し、地元の千葉銀行の佐久間英利頭取が就任する予定だ。

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