ライバル不在だったリンガーハット、客離れの本質的原因…「いきなり!ステーキ」の二の舞い?

 リンガーハットは客数増加を課題に挙げた月例会を開催しているようですが、いつまで経っても具体的な課題と改善策が見えない。ここがダメだから次はこうしよう、という試みを重ねていくPDCAサイクルがほとんど回っていない状態なんです」(重盛氏)

 その理由はどういった部分にあるのだろうか。

「現最高顧問や現名誉会長として経営にかかわっている創業家の影響力は大きいでしょう。会長が決めたことは社長も従わざるを得ないですし、社長が指示を出せば下はそれを聞かなければいけない。会長の意思決定には誰も逆らえません。一代で築き上げた会社特有の融通が効かない部分は根強くあるのでしょうが、このまま業績悪化が進めば『いきなり!ステーキ』のようにM&Aを余儀なくされてしまう可能性もゼロではないです。

 そのためにも、やはり消費者に対するメッセージ性を明確にすべきでしょう。コロナ禍でもイートインしたいお店、もしくはテイクアウトで選ばれるお店になるにはどうしたらいいのか。それはPDCAサイクルをしっかり回していかないと見えてきません」(重盛氏)

 さらに今後のカギとなるアドバイスを聞いた。

「今後もイートイン需要が爆発的に増えるとは見込めないので、テイクアウトにどこまで“コト消費”としての価値を見いだせるかがカギになるでしょう。“持って帰って食べる”という行為に、プラスアルファの価値をどう乗せていくか――例えば、店内で食べるメニューへの再現性をより高めたり、より楽しい体験ができたりするような商材の組み合わせ。今は外に出かけにくいご時世ですが、自宅で家族とともに食事する時間も貴重な体験の場ですよね。単にモノを食べるのではなくて、そうした体験をどのようにレベルアップしていくかを考えなければいけません。

 消費者の想いに応えられる商品を届けることができれば、食の豊かさは上がっていくのではないでしょうか。単に“コロナだからイートインが増えない、だからテイクアウトにシフトする”といった論点だけで舵を切っていくと、今後もリンガーハットの経営は難航するでしょう」(重盛氏)

 今日の外食チェーンの役割は、モノ消費だけにとどまらないようだ。リンガーハットにも、消費者の胸を躍らせる“コト消費”の研究と提供が急がれる。

(文=二階堂銀河/A4studio)