Suica等の発売中止に疑問…半導体不足だけが原因なのか、なぜ関東圏だけなのか

発売が中止されたSuica等の交通系ICカード
発売が一時中止されたカード(JR東日本のプレス発表より)

 世界的な半導体不足の影響を受けJR東日本などは、記名式の「Suica」及び「PASMO」カードの発売を8月2日から一時中止した。すでに無記名のSuica、PASMOについても、6 月8 日から発売を一時中止している。これにより、関東圏では定期券以外の交通系ICを新たに入手することは困難な状況だ。

 半導体が不足しているのは確かだが、全面的に販売を中止しなければならないほどなのか。トヨタ自動車グループでは、一時期に比べて半導体不足が解消して生産量が回復基調にあるとして、四半期の営業利益は日本企業として初の1兆円の大台に乗るほどの好調ぶりだ。

 また、Suicaなどと同じく半導体を利用するICチップを搭載するクレジットカードやマイナンバーカードなどは現在でも大量に発行され続けている。関東圏以外の地域での交通系ICカードも販売制限は起きていない。

 なぜSuicaとPASMOだけ、発売中止にしなければならないのか。Business Journal編集部は、JR東日本の広報部に話を聞いた。

――Suica(およびPASMO)が販売中止となった件につき、他の交通系ICカードが販売制限していないなか、関東圏だけ販売中止するのでしょうか。

JR東日本広報部「6月8日から無記名Suicaカードの発売を中止させていただきましたが、お客さまのニーズに対して十分なSuicaカードの供給を得られる見込みが立たない中、Suica定期券等の発売や紛失時等の再発行等のサービスを各駅で継続に必要な在庫を確保する必要があるため、(記名式も発売中止に)追加をさせていただきました。なお、全国相互利用事業者が発行する他のICカードの状況につきましては、申し訳ございませんが、弊社ではわかりかねます」

――供給できる枚数に対し、需要予測が上回っているということだと推測いたしますが、実際にどれほどの販売数なのでしょうか。

JR東日本広報部「2023年度は、当初、年間370万枚程度の需要、150万枚程度の在庫と250万枚の供給及び需要に応じた追加の供給を計画しておりましたが、半導体不足の影響の影響により供給が下期にずれ込んだことに加え、2023年春頃からインバウンド需要等のSuicaカードの需要拡大が続いております」

――ICチップを必要とするのは、クレジットカードやマイナンバーカードなども同じだと思いますが、それらは膨大な枚数のカードを発行し続けています。Suica等が販売制限しなければならないのはなぜなのでしょうか。

JR東日本広報部「6月8日から無記名Suicaカードの発売中止により、多くのお客さまにご協力いただき、Suicaカード全体の発売数は減少しましたが、観光等の短期ご利用のお客さまの記名式Suicaニーズの高まりや、記名式Suicaの発売数の増加に対して十分なSuicaカードの供給を得られる見込みが立たないため、このたび追加させていただくことといたしました」

――これは邪推を多分に含みますが、半導体不足であるのは確かだとしても、Suica販売中止は、モバイルSuicaの普及を狙ったものではないかとの指摘があります。実際に販売を続けることが困難なほど、ICチップを入手できなくなっているのでしょうか。

JR東日本広報部「2023年度の下期から徐々に回復を見込んでおりますが、2024年度以降については現時点では十分なSuicaカードの供給を得られる見込みが立っていない状況であり、具体的な見込みが立つまでには数カ月程度要するとメーカーから説明を受けております。ご不便、ご迷惑をお掛けいたしますが、発売再開に向けて最善を尽くして参りますので、何卒ご理解賜りますよう、お願い申し上げます」

 Suicaカードを新たに発行することができなくなったことから、今後はモバイルSuicaを利用する人が増えるとみられるが、ネット上ではモバイルSuicaへの不信感を訴える声も少なくない。実際に6月24日には0時37分頃から13時頃までシステムに不具合が生じたとしてモバイルSuica定期券が使えないなどのトラブルが生じたほか、3日後の6月27日にもiOS端末でモバイルSuicaが使えないなどの障害があった。後者についてはApple Pay側の不具合だったことがわかっているが、いずれにしてもモバイルSuicaに対して全幅の信頼を寄せられる状況ではない。

 発売中止を受けて、メルカリなどのフリマアプリでは、無記名Suicaが1000~2000円ほどで出品されている。販売中止期間が延びれば、この個人売買での価格も上昇する可能性がある。発売の早期再開が待ち望まれる。

(文=Business Journal編集部)