札幌ドーム命名権販売、応募ゼロか…広島カープ本拠地より高額価格で非現実的

札幌ドーム命名権販売、応募ゼロか…広島カープ本拠地より高額価格で非現実的の画像1
札幌ドーム(「Wikipedia」より/モンモン)

 株式会社札幌ドームは命名権(ネーミングライツ)を販売するとして公募を行っていたが、応募締め切り日である今月29日を目前に控え、現時点(26日現在)で応募がないことがわかった。札幌市の秋元克広市長が26日の記者会見で明らかにした。プロ野球・北海道日本ハムファイターズが昨年度シーズンから本拠地をエスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)に移したことで、2024年3月期の純損益が2億9400万円の赤字予想からさらに膨らむ見通しとなるなど苦境に陥っている札幌ドーム。浮上策として打ち出した命名権販売だったが、その条件が「強気」だとの声も出ていたなか、計画に暗雲が立ち込めている。

 札幌ドームの経営は厳しい。日ハムが本拠地を移したことで年間20億円以上とみられる売上を失い、24年3月期は大幅な赤字決算となる予定。そんななか、集客の要として総額10億円を投入して設置したのが、1~2万人規模のイベントを開催する「新モード」だが、使用・予約件数は少なく、市民からは「事実上の税金の無駄使い」との声もあがっている。すでに市は本年度予算で札幌ドームへの助成金として1億4000万円を計上するなど事実上の補填(ほてん)を決定しているが、札幌市が55%の株式を持つ第三セクターである札幌ドームの経営が行き詰まれば、さらに税金が投入される可能性もあるため、「ドーム解体」論も聞かれる事態となっている。

 札幌ドームが苦境に陥った大きな原因は、前述のとおり日ハムの本拠地移転だ。サッカーW杯日韓大会の札幌開催を目的として01年に開業した札幌ドームは、経営安定化のためにプロ野球球団の日ハムを誘致し、04年から日ハムの本拠地となっていた。だが、札幌ドームは16年に日ハムから徴収する一試合当たりの使用料を値上げ。日ハムが札幌ドームに支払っていた使用料は1日あたり約800万円前後とみられ、球場内の広告料や売店など付帯施設からの収入もほとんどが札幌ドームの取り分となっており、日ハムは16年から本拠地移転の検討を本格化させ、23年に新球場のエスコンフィールド(北広島市)に本拠地を移した。

「第三セクターである札幌ドームは札幌市職員の天下り先であり、要は典型的なお役所仕事が日ハムの流出と経営危機を招いたということ。日ハムは札幌ドームに使用料の減額や指定管理者制度(公共施設の運営を民間企業等に委託する制度)の導入を提案してきたが、札幌ドームは受け入れなかった。民間企業の日ハムが球団経営の採算性を重視するのは当然だが、一方の札幌ドームは日ハムが出ていく事態になるとは想像もしていなかったのではないか」(地元メディア関係者)

カープや楽天の本拠地より高額

 大幅な売上減の穴埋めを埋めるべく打ち出したのが、命名権の公募だ。東北楽天ゴールデンイーグルス(宮城県)や埼玉西武ライオンズ(埼玉県)の本拠地が数年おきに名称を変更しているように、命名権の販売はすでに普及しているが、札幌ドームのそれが物議を醸したのが、その希望金額の高さだ。命名権協賛企業の募集要項によると、ドーム側が希望する額は1年で2億5000万円以上、希望期間は2~4年。主な希望事項として以下を設定している。

(1)愛称に「ドーム」を含めること
(2)愛称は、公の施設にふさわしいものとし、施設の設置目的がイメージできること(3)親しみやすさや呼びやすさなど、市民および施設利用者の理解が得られる愛称とすること

 たとえば千葉ロッテマリーンズの本拠地「ZOZOマリンスタジアム」のネーミングライツ料は年間3億1000万円、広島東洋カープの「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム 広島」は年間2億2000万円、東北楽天ゴールデンイーグルスの「楽天モバイルパーク宮城」は年間2億100万円。札幌ドームの希望価格は、人気球団のそれより高いことになる。

「プロ野球球団の本拠地でもない札幌ドームの命名権の購入に経済合理性はなく、2億円以上出す企業が出てくるとは考えにくい。札幌ドームとしては『赤字が年約3億円だから命名権で2億5000万円を埋め合わせ、残り5000万円の売上があれば収支がトントンになる』くらいの計算で金額を設定したのでは。これも完全なお役所仕事だというほかない。もし期日までに応募がなければ、条件を下げて再度募集をかけるかもしれないが、半額以下の1億円でも買い手は出ないだろう。条件が非現実的」(同)

 実は札幌ドームが命名権協賛企業を募集したのは今回が初めてではない。2011年に年5億円以上、5年間以上という希望を提示し、「札幌ドーム」の言葉を分割せずに含めることなどを条件に募集したものの、条件で折り合う企業は出ず、販売には至らなかった。今回もその二の舞いになる気配が漂いつつある。

 当サイトは札幌ドームに最新の応募状況などを問い合わせ中であり、回答があり次第、追記する。

(文=Business Journal編集部)