『この金額だと高いかな、安いかな』と判断する参考として、同業他店での提供価格があります。お客さんは店舗周辺にある複数の同業他店の商品価格と比較します。もちろん、ボリュームや味、トッピングなど、価格以外の部分も含めた比較になりますが、懐具合もありますから価格は大きな要因となります。そのため、お店は本当の希望販売価格よりも低めに設定することもあります。
これらを踏まえて天下一品の『こってり』を改めて実食してみました。約30年前に表参道に出店していた店舗に初めて訪れて『京都のラーメンって、あっさりではないんだ』と感じましたが、以来、機会があるときに利用しています。変わらずのこってり具合で、飲むというより食べるようなスープの存在感は、天下一品ならではだと思います。
味というのは各個人の嗜好に左右され、好きか嫌いかという判断になりますが、天下一品の個性あるスープはまさにオリジナル性が高く、これが好きで利用するお客さんは多いでしょう。940円という価格は安いとはいえませんが、このようにオリジナル性が高いと、昨今のラーメン店の価格を考えると決して高いともいえなくなります。私が訪問した新宿西口店の周辺にはラーメン店が他にも多くあり、それらと比較しても高くも安くもない価格です。
材料費や人件費、光熱費などの上昇により、今や消費者のなかで『ラーメンは1000円以下』という概念は薄れつつあります。ライスやサイドメニューとセットになった定食もランチで1000円の壁を超えているお店は増えていますから、決して高いとはいえないでしょう。個性やオリジナル性がある商品の場合、それを求めてお客さんは来るので、安売りする必要も薄まります。限られた席数で同じような滞在時間(回転率)なら、商品ができるだけ高く売れるにこしたことありません。満席にならない時間帯が目立つようなら、お客さんは他のお店に流れていることになりますが、私が訪問したお昼過ぎの時間帯は満席で賑わっていました。
比較として、日高屋の『中華そば』(420円)も食べてみました。価格としては天下一品の半分以下です。最近のカップラーメンはちょっと凝ったものなら300円前後になるので、外食で420円でラーメンが食べられるというのは素晴らしいことだと思います。では、日高屋に軍配が上がり、天下一品が負けかといえばそうではなく、『それぞれ』だと思います。お客さんは味と価格のバランスから判断して自分が気に入ったお店に行くので、お店としてはどのポジションで存在できるのか、必要とされるのか、に尽きると思います。増加するインバウンド対応もあるなかで、飲食店はさまざまな要素や環境を考慮しながら戦略的に価格を決めていくでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)