今年の特徴のもう一つは、消費の二極化に伴い低価格のものと高価格のものが差別化されて並んでいたという点です。小売店側も利益を確保したいという意図からか、1000円以上の高価格帯の商品を数多く投入しており、昨年と比べて全体的に金額が上がった印象を受けましたが、高価格帯の商品が多く売れ残っている光景もみられました。顧客から『さすがに高すぎて手が出せない』と受け止められた可能性があります。実際に約300円のものと約1000円のものを食べ比べてみましたが、味やクオリティに3倍の差があるかといわれれば、そこまで大きな差は感じられませんでした。
小売店各社は昨年までの恵方巻の販売動向を分析して価格と数量を決めるものの、前述のとおり今年は小売業界全体でみれば過剰感があったように思われ、来年以降の恵方巻商戦は落ち着いていくかもしれません」
では、廃棄コストや値引き販売によって利益より損失が大きくなる可能性はないのか。
「大雑把な計算として、スーパー一店舗あたりの利益率が35~50%だと仮定すると、半額に値引くと商品単体では赤字になる場合もあると推察され、さらに廃棄コストが加われば恵方巻という商品全体でみると利益が出ないという結果になる可能性はあります。その一方、恵方巻を目当てに多くのお客さんが来店して他の商品の売上が伸びるという効果も考えられ、店舗全体でみれば利益の伸長につながるというケースもあり得るでしょう」(渡辺氏)
(文=Business Journal編集部、協力=渡辺広明/消費経済アナリスト)