●この記事のポイント
・「綾鷹」は24年春にリニューアルを実施、これが功を奏し2位に復活
・旨味を維持しつつも苦みや渋みを抑え、もう一口、もう一杯と、飲みたくなる軽やかな後味に
・容量を従来の525mlから650mlにサイズアップし、1日を通じて楽しめるように
緑茶飲料市場の販売数量(※)としては、長きにわたり伊藤園の「お~いお茶」が1位、コカ・コーラ社の「綾鷹」が2位という構図が続いていた。しかし、2020年からサントリーの「伊右衛門」が販売数量を伸ばし、22年度に「綾鷹」は3位に転落した。だが、「綾鷹」は24年春にリニューアルを実施、これが功を奏し2位に復活した。リニューアルではどのように味を変え、それがなぜ成功につながったのか。日本コカ・コーラ株式会社のマーケティング本部緑茶事業部部長、助川公太氏に取材し、近年における「綾鷹」の戦略を聞いた。なお各社は同一ブランド内で濃い緑茶やほうじ茶などのラインナップを揃えるが、本稿では標準の緑茶商品に焦点をあてる。(※ブランド別販売数量、飲料総研調べ)
●目次
緑茶飲料のブランド別販売数量は、「お~いお茶」が年間8,000万ケース台で1位をキープし、他社が追随する構図が続いてきた。コカ・コーラ社の「綾鷹」は21年までの数年間、6,000万ケース前後を維持して2位をキープ。サントリーの伊右衛門は5,000万ケース台で3位についていた。しかし22年度は綾鷹が5,470万ケースまで数量を減らし、伊右衛門が2位に浮上した。翌23年も綾鷹は3位のままだった。なぜ逆転を許してしまったのか。
「綾鷹はコアなファンの間で評価が高かったのですが、21年以降、ライトユーザー層や若年層を取り込めていない傾向が見られるようになりました。発売は2007年で、当時からのファンが高齢化する一方、若年層をあまり獲得できていませんでした。好意度や購入意向が徐々に落ちていたのです」(助川氏)
なお、伊右衛門は2020年に発売以来、最大のリニューアルを実施。緑一色でペットボトルを覆うラベルの面積を縮小し、中身が見えやすいものに変更した。これがライトユーザー獲得に寄与した可能性がある。
こうした状況を経て、「綾鷹」は24年春に7年ぶりのリニューアルを実施。24年の販売数量は5,960万ケースとなり、5,500万ケースの伊右衛門を抜いて2位に再浮上した。綾鷹は主に、(1)デザイン、(2)容量、(3)味、(4)コミュニケーションの4点を刷新したと助川氏は話す。
「デザインはシンボルマークの急須を残しつつ、若い世代が手に取りやすいモダンなものに刷新しました。容量も従来の525mlから650mlにサイズアップし、1日を通じて楽しめるようにしました」(同)
スーパーが自社で販売するPB商品が安さを武器に勢力を伸ばすなか、容量アップはお得感をもたらし、販売数量の回復に貢献したのかもしれない。味はどのようにリニューアルしたのだろうか。
「650mlになっても飲み飽きないよう、飲みやすい味に変更しました。以前の綾鷹も評価は高かったですが、苦さや渋さがあり、水分補給などいろんなシーンで飲み続けやすいとはいえませんでした。リニューアルでは旨味を維持しつつも苦みや渋みを抑え、もう一口、もう一杯と、飲みたくなる軽やかな後味にしました」(同)
発売当初の綾鷹は「プレミアム緑茶」として、苦みや渋みなどの緑茶らしさを訴求していた。24年度のリニューアルで軽やかな方向にシフトしたことになる。なお、(4)のコミュニケーションに関しては、高齢者から若年層まで幅広い年代で支持を受けている宇多田ヒカル氏をアンバサダーに起用。幅広い年代へのアピールに努めた。