だが、被害の拡大を受けて日本証券業協会は今月2日、各社の約款などに関係なく1月以降に発生した不正アクセスによる被害について一定の補償を行う方針で大手10社が合意したと発表した。楽天証券も同日、以下方針を発表した。
「今般のフィッシング詐欺等による不正アクセスにより、第三者がお客様の資産を利用して、有価証券等の売買等を行ったことにより発生した損失について、従前の約款等の定めに関わらず、お客様個別の状況に応じて、一定の被害補償を行う方針です」
「なお、不正取引被害のお申し出を頂戴しているお客様に加え、当社で確認した不正が疑われる取引についても、対象のお客様へのご連絡を予定しております」
こうした方針を示した理由について、同社はいう。
「今般については、証券界としての信頼確保や証券市場の健全な発展のため、業界全体で協議・対応をおこなっており、その結果として、当社も賛同した対応方針が、5月2日に日証協からの発表されております。補償の対象となる期間などについては、お答えを控えさせていただきますが、今般事象の全容把握に努めると共に、お客様への個別対応・検討は真摯におこなってまいります」
楽天証券は前述のとおり、セキュリティの強化も行うと決めたが、気になるのが、既存顧客の取引回数の低下や利用機会の減少につながる可能性はないのかという点だ。
「影響は軽微であると考えています。ご不便をおかけするお客様がいらっしゃる可能性もありますが、お客様の大切なご資産・情報をお守りすることを最優先にと考えています」
証券業界関係者はいう。
「証券業界はこれまで、今回のような被害については個別での補償はしないという方針だったので、大転換といってよく、大きな決意の表れ。ただ、二段階認証をしていないユーザへの補償をどうするのかといった線引きや、不正ログインによる取引であることの確認作業、損失額の確定、どこまでを補償対象とするのかなど、証券各社にとっては、かなり重い労力を強いられることになる」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)