人事データは「バラバラ」でいい?急成長HRテック市場で200億円を目指す統合型システム

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jinjer新経営陣

●この記事のポイント
・jinjerは元Zendesk社長の冨永健氏を新CEOに迎え、経営陣を刷新。「第二創業期」として新ビジョンを発表した。
・HRテック市場の急成長を背景に、人事データの分散課題を解決する統合型システム「ジンジャー」で市場拡大を狙う。
・AIエンジニア増員や生成AI・AIエージェント活用により、人事業務を自動化・高度化し、No.1統合型人事システムを目指す。

 クラウド型人事労務システム「ジンジャー」を提供するjinjer(東京都新宿区)の新しいCEOに5月1日、元Zendesk社長の冨永健氏が就任した。これに伴い、CFO、CCOなどの経営陣も刷新され、新たな体制で事業を推進していくことになった。同社ではこの新体制への移行を「第二創業期」と位置づけ、今後の事業展開を発表する記者会見を行った。

 登壇した冨永CEOはまず、新しく策定したビジョンとミッションを紹介。ビジョンは「『ひと』の可能性のすべてが見える世界へ」、ミッションは「人事の『これからの当たり前』をつくり、お客様とともに進化する」となっている。同社が提供する価値や社会における役割を、社内外に向けて一貫したメッセージとして発信していくことを目指している。

●目次

「ジンジャー」でバラバラの人事データを解決

 日本のHRテック市場は現在、約1800億円(出所:デロイトトーマツミック経済研究所)と言われている。HRテックには採用管理クラウド、人事・配置クラウド、労務管理クラウド、育成・定着クラウドなどが含まれる。注目すべきは成長率で、年平均29.5%増で拡大し、2028年度には約3900億円の市場規模になると予想されている。

 HRテック市場の急成長を加速させる社会背景としては主に2つの要因がある。労働人口の減少と価値観の多様化だ。企業にとって、従業員一人ひとりの生産性向上と従業員エンゲージメント(組織との関係性)を向上させることが急務となっている。

 これに対してIT業界は労務管理システムや人事評価システム、ワークフローシステムなど数多くのソリューションを提供してきたが、一部の問題しか解決せず今日に至っている。その原因は「人事データがバラバラ」(冨永CEO)だからだ。

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 人事データは平均で5つのシステムに分散しているといい、例えば、ある従業員Aの学歴や社歴は労務管理、どのくらい働いているのかは勤怠管理、給与明細は給与管理、という具合だ。「私の姓はワ冠の『冨』ですが、ウ冠の『富』もある。これをシステムごとに入力し間違えると、それだけでデータが合わなくなる」(冨永CEO)ということになる。

 近年、従業員の離職率を抑えるのは経営者の必須課題だが、それには給与情報と人事評価が一元化されていなければならない。高い評価を得ているにもかかわらず給与に適切に反映されていなければ離職につながる可能性があるし、そこに本人の異動願や異動履歴なども考慮されなければ、やはり離職につながるかもしれない。

 冨永CEOは、そうした課題を根本的に解決するのが、同社で提供しているクラウド型人事労務システム「ジンジャー」だという。勤怠や給与のみならず、社保手続き、人事評価、さらにはタレントマネジメントや1on1ツールなど、すべての人事関連業務を1つのプラットフォームに総合することができるという。これにより、企業は「正しい人事データ」を収集・管理・活用し、単なる記録ではなく組織の成長を支える資産として活用することができる。具体的に言えば、採用計画、人員配置、研修効果の測定などを容易に行うことができる。