●この記事のポイント
・米国で注目を集めるClaudeなどの生成AIは、金融アナリストやコンサル業務の多くを代替可能とされる。
・データ収集や分析はAIに任せ、人間は経営者理解や課題解決など本質的価値に集中する時代へ移行する。
・若手育成の仕組みや情報管理のリスク対応が課題となる一方、中小企業や地方にも新たなチャンスが広がる。
近年、生成AIの進化は目覚ましく、特に米国ではAnthropic社の「Claude」が金融アナリストや経営コンサルタントの領域に浸透し始めている。「AIが人間の専門職を代替し始めた」との見方が一部で過激に報じられているが、果たしてその実態はどうなのか。金融・コンサルの世界に本当に“職業消失”は訪れるのか。ITジャーナリストの本田雅一氏に話を聞いた。
●目次
まず本田氏は、AIの特性がどのように金融やコンサル業務にフィットするかを指摘する。
「金融の世界は、法律や規制といったルールが明確で、経済研究も積み上がっています。AIにとっては非常に扱いやすい領域です。従来、ジュニアアナリストが数日かけて作っていた投資レポートを、AIはわずか数分で仕上げることができます」
AIが参入しているのは、情報収集やデータ処理、相関関係の分析など、人手に頼っていた労働集約的な業務だ。経営コンサルタントも、膨大なデータを集めて分厚い資料を作る作業はAIが代替可能になりつつある。
「つまり“補助的な業務”はAIに任せられるようになったわけです。これまで人間が担ってきた仕事の中で、最も時間を要していた業務領域が効率化される。これはアナリストやコンサルタントにとっても大きな意味を持ちます」
では、AIがレポートや資料を瞬時に作れるようになったとき、人間の役割はどう変わるのか。本田氏は「職業そのものが消えるわけではない」と強調する。
「アナリストやコンサルタントが不要になるのではなく、求められる役割が変わるのです。AIは過去データを基にした論理的な分析は得意ですが、企業の背景や経営者の思惑、組織文化といった“文書化されていない情報”までは理解できません。そこにこそ人間の価値があります」
実際、経営者にとってコンサルタントの存在価値は、単なる数字の分析以上に、課題の本質を見抜き、将来に向けての方向性を共に考える点にある。AIが作る提案書は“氷山の一角”にすぎず、暗黙知や経験値に基づく助言は人間でなければできないのだ。
本田氏は「現状のアナリストやコンサルタントの業務の8割はAIで代替可能」と語る。一見すると衝撃的だが、それはむしろ人間に残る2割の業務の重要性を浮き彫りにする。
「AIに任せられるのは、資料作成や統計処理などの作業です。しかし人間にしかできないのは、そこから得られた示唆をどう活かすかを考え、クライアントに寄り添って意思決定を支援すること。結果として、職種が消えるのではなく、職務の焦点が“本質的価値の創出”へと移行するのです[隆松2]?[隆松3]?」
プログラマーの例を挙げればわかりやすい。コードを書くという行為自体はAIに任せられるが、システムの設計思想やユーザー体験をどう描くかは人間が担う部分だ。金融やコンサルも同じく、「発想力と人間理解」が中核になる時代へと移行していく。