一方で懸念されるのが、若手の育成環境だ。従来、ジュニアアナリストやパラリーガルといった“下積み的業務”を通じて、専門職としての基礎を学ぶ仕組みがあった。しかし、その役割はAIが担ってしまう可能性が高い。
「これまで弁護士を志す人がパラリーガルとして経験を積んできたように、金融やコンサルにも若手が地道に学ぶプロセスがありました。ですが、そうした労働集約型の業務はAIに代替されていく。となれば、育成の仕組みを根本から再設計する必要があるでしょう」
これは逆に言えば、若手がより早期に実践的な場に携われるチャンスでもある。単なるデータ処理に時間を費やすのではなく、AIを活用しながら上位業務に直接関わることで、成長のスピードは速まるかもしれない。
AI活用の度合いによって、企業間の競争力にも変化が生じる。大企業がリソースを投じてAIを全面的に導入すれば、効率性と分析力で一段と優位に立つことは間違いない。
しかし本田氏は「格差が広がる一方で、逆転の可能性もある」と語る。
「従来は人材や資金が不足して挑戦できなかった中小企業や地方の事業者でも、AIを駆使すれば新しいビジネスを生み出せます。美容師が自らのサロンに最適化した予約システムをAIで開発し、パッケージ化して販売するといった事例も生まれ得る。AIは大企業の武器であると同時に、小規模事業者にとってのチャンスでもあるのです」
ただし、無条件にAIを導入すればよいわけではない。企業にとって最大のリスクは、情報管理と利用ルールの不備だ。
「顧客情報や社外秘のデータをどう扱うか、どこまでAIに渡すのか。その理解が甘いと大きなリスクになります。AIを[F4]?提供する企業はセキュリティを考慮していますが、使う側のリテラシーが追いつかなければ意味がありません。全社員がAIの仕組みを理解する必要はなくても、最低限のガイドラインを設け、共通認識を持たせることが重要です」
つまり、企業戦略としては「AI活用力」と「情報リスク管理力」の両立が求められる。
AIが知識の伝達を担う時代、教育のあり方も変わらざるを得ないと本田氏は言う。
「知識そのものはAIが提供してくれる。重要なのは、それをどう使いこなし、新しい価値を生み出すかという方法論です。教育も、知識暗記から“価値創造のトレーニング”へとシフトしていくでしょう」
同様に、企業においても「過去のやり方をなぞる」働き方は通用しなくなる。AIが当たり前に存在する社会で、人間がどのように独自の付加価値を出すかが問われる。
総じてAIは、金融アナリストやコンサルタントを“消す”のではなく、“再定義する”。人間はAIに任せられる部分を切り離し、本質的な判断・発想・人間理解に集中することになる。
「AIを前提に仕事を設計し、どう使いこなすか。それが一人ひとりの競争力になります。AIと競うのではなく、AIと共に働く力こそ、これからのビジネスパーソンに必須のスキルです」
AIは脅威であると同時に、大きな可能性を秘めた道具だ。変化の波を恐れるのではなく、自らの仕事を再定義し、AIと共創する姿勢が求められている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=本田雅一/ITジャーナリスト)