「いつも私だけ扱いが雑」「待ち合わせをするといつも遅刻される」「損な役回りを押しつけられがち」
気にしても仕方ないと思いつつ、「私、なめられてるのかな」と悩んでしまう。そんな人は少なくないようです。じつは、この「なめる/なめられる」問題はささいなことのようで、人間関係、仕事、ひいては人生すべてさえ左右する重要なトピックスです。
実業家でライターでもある黒坂岳央氏は、グローバルな環境での勤務経験、独立起業を経て、「なめられると人生で損をする」という真理にたどり着いたそうです。この連載をまとめ、加筆・改稿したビジネス書『なめてくるバカをだまらせる技術』が、アルファポリスより好評発売中です。
SNSなどでもてはやされている「やられたらやり返せ」という意見は、正直そのとおりだと思う。だが、現実的ではない。
それができない人がなめられるのだし、何をどこまでやればいいのかもはっきりわからない。下手をすると、相手を激昂させますます加虐が高まるリスクだってある。では、どうすればいいのか?
結論から言えば、感情的にやり返すのではなく、理性的に考えたうえで、反撃戦略を練るのだ。そうしてその戦略に基づき、自分をなめることのコストを払わせるのである。
本書の最後のまとめとして、なめてくる相手を合理的に黙らせ、人間関係の主導権を握る技術を紹介する。
「反撃」と言うと、怒りや復讐心に任せて、感情的にやり返すことだと思われやすい。しかし、本当に効果のある反撃とは、もっと冷静で論理的な行動であるべきだ。この発想は、ゲーム理論の考え方に通じている。
ゲーム理論とは、複数の意思決定者(プレイヤー)が互いに最適な戦略を探り合うという理論だ。ここで重要なのは、「ある行動を取ったときのコストと利得を比較し、人は利得が上回る限りその行動を繰り返す」というもの。これが、ゲーム理論の基本原則である。この原則に従えば、得のない行動をする人はだれ1人おらず、損をするなら人間は行動しない、ということになる。
さっそく、ゲーム理論の原則に従って考えてみよう。なめてくる相手はなぜわざわざそのような行動をしてくるのか。それは、あなたをなめることはほぼノーコストで、むしろ自己優位感といった実利があるからだ。つまり、相手の頭の中では、利得がコストを上回るという不等式が成立している状態なのだ。
反撃とは、この不等式を崩す作業である。なめてくる行動にはコストが発生すると、相手に学習させること。これにより相手は損な行動を避けるようになり、やがてその関係性は静かに修正されていくというわけだ。
この戦略が有効な理由は、相手からよけいな恨みを買うことなく、周囲にも悪印象を抱かせない点にある。正面から殴り合うようなケンカではなく、ジワジワと、かつ合法的に痛みを返す。これがもっとも効果的で、あと腐れのないなめ返しの方法なのだ。