「家族」というチームのつくり方

妻の機嫌がみるみるよくなる“雑談力”──家庭円満は会話のひと工夫で決まる

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奥さんの機嫌がよくなる雑談技術③
困りごとを解消する

前回、奥さんの機嫌をよくするためには、じつは家庭内での雑談が重要だという話をしました。そして、家庭内において、「小さなことを大切にする」「相手の好きなことを話題にする」という、効果的な雑談の技術を紹介しました。今回は、さらに踏み込んだテクニックを紹介します。

これまで何度も指摘してきましたが、多くの場合、女性は男性より心配性だと言われています。そのため、家庭内において、旦那さんが気にしないような小さなことでも、奥さんは気づいてしまい、頭を悩ませているということは少なくありません。そうした困りごとを、旦那さん側がいかに察知し、いち早く解消してあげられるか、というのが3つめのポイントになります。
ビジネス組織の現場のケースを見ることで、どういった点を家庭で活かせるか探ってみましょう。

私の前職では、女性比率がほぼ100パーセントの部署がありました。50人くらいの組織で、工場のように役割分担をして作業を進める部署なのですが、メンバーは女性ばかりで、コミュニケーションの問題が頻発していました。
「AさんとBさんが仲が悪い」とか、「Cさんの言い方がイヤだ」とか、「Dさんとはみんな相性が悪い」とか、そういった陰口や噂話が蔓延していたのです。目標に対する意識が低いだけでなく、トラブルや退職に発展したりすることも多く、その事業部の責任者は常に頭を悩ませていました。
ところが、この問題を抱えた女性組織に、田山(仮名)さんという男性スタッフが中途で入社してきたことで、そうした状況が一変します。女性たちの愚痴や陰口、噂話がピタッとやみ、目標に向かう素晴らしい組織へ変貌したというのです。

どうしてそんなことが起きたのでしょうか。
冒頭にも書きましたが、女性というのは男性以上に心配症であるものです。そのため、女性だけの組織というのは、各々の心配が折り重なるように、不満やすれ違いが生まれてしまい、それが火種となって、あっという間に火が燃え広がって収拾がつかなくなっていく、そんなトラブルが起きやすいのです。

そうした状況下で田山さんがやったのは、それまでその組織になかった1on1面談を取り入れ、月に1回に定期化し、とにかく50人のスタッフの話を聞くというものでした。
彼からしたらどうでもいいようなことであっても真剣に耳を傾け、誤解があればその誤解を解き、不満があれば解消するようにすぐに動き、噂話は事実確認をしてどうしてそういった問題が起きたのかきっちりと向き合ったそうです。つまり、火種が小さいうちに、一つひとつ消していったのです。
目の前の火種がなくなったスタッフたちは、どうなっていったと思いますか。なんと、自然と目標に向かうようになった、というのです。生産性をどう高めるのか、目標はどうすれば達成できるのか、主体的に考え、行動するようになったそうです。
そして田山さんは、「困りごとを解決してくれる人」というポジションを確立し、絶大なる信頼を得たそうです。

ここで、家庭の話に戻しましょう。奥さんが家庭内で抱えている、火種を小さいうちから解消できているか。これが重要になります。
ではどうすればいいのでしょうか。田山さんほど、完璧に対処できなくても問題ありません。奥さんがこぼす小さなボヤキ。それがまだ小さいうちに、「それってどういうことなの?」「何に困っているの?」と耳を傾けていく。それだけでいいのです。
簡単なようですが、我々男性は女性の心配を「気にしすぎ」「小さなこと」を、軽視してしまいがちです。なので、まずはそうした態度を改め、まずは奥さんの心配に耳を傾ける。そして小さな火種に気づいてあげる。それを意識してみるだけで、家庭の雰囲気はよくなっていくはずです。

奥さんの機嫌がよくなる雑談技術④
自分の困りごとを話す

続いての、奥さんの機嫌がよくなる雑談技術は、「自分の困りごとを話す」です。

私自身、自分の困りごとを話したり相談したりする習慣はまったくありませんでした。自分の問題は自分1人で向き合うものであり、誰かに相談するものではないと思いこんでいたのです。
ですが、奥さんは私の変化に敏感で、少しでもいつもと雰囲気が違うと、「何考えているの?」と質問してきます。
あまりにもすぐ気づくので、私はいつも驚いてしまいます。なぜなら、多少悩んでいるにせよ、自分自身では深刻だと気づいていないことも多いからです。こんなふうに奥さんから質問されているうちに、自分の悩みごとを奥さんをはじめとして、他の人にも話せるようになりました。
この効用は明確にあります。自分の困りごとを言葉にすることで、より解決が早くなるのです。相談すること人から助言がもらえるというのもありますが、何より、自分が何に困り、どうしたいと思っているのか、自分自身の思考を整理することが断然できるようになりました。

ちなみに、私の奥さんは聞き上手なので、「そんなこと考えてたんだ」「そんなこと感じてたんだ」「それは仕方ないんじゃない?」と同調してくれることもありますし、「それはあなたが間違ってるんじゃない?」と遠慮なく提案してくれることもあります。
以前の私は、自分の思考がまとまらないうちに話をするのがとても嫌だったのですが、まとまらないうちに妻と話をすることで、クライアントと話をするときには思考が整理されるようになっていき、自分のまとまらない思考を口に出すことの大切さがわかるようになりました。
そして、毎日そういった小さな困りごとを、火種が小さいうちに聞いてもらうことによって、いつの間にか仕事のストレスが軽減され、毎日をイキイキと意欲的に生きられるように変わっていきました。
こうして毎日、1日1雑談を習慣にすると、自分のネガティブな感情を自分の中にため込むことがなくなったのです。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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