もはや一社ですべての領域でトップを走り続けるのは不可能に近い。そのため、GAFAMの各社は「自社の強みに集中し、不足部分は競合からでも調達する」という現実的な戦略をとり始めているのだ。
小久保氏によれば、今後のAI競争は「3つの階層」で展開されるという。
1.インフラ層(計算基盤)
クラウドや半導体をめぐる戦い。グーグル、アマゾン、マイクロソフトが中心で、NVIDIAも不可欠な存在。
2.モデル層(頭脳)
GPT(OpenAI)、Gemini(Google)、Claude(Anthropic)、Llama(Meta)など、生成AIそのものの競争。
3.アプリ層(製品・サービス)
ユーザーが直接触れるアプリケーション。Copilot、ChatGPT、Siri、WhatsAppのAIアシスタントなど。
勝者は一社が独占するのではなく、この三階層をまたいで「最も強力なアライアンスを築いた陣営」となる。すでにマイクロソフトとOpenAIの提携は、その典型例だ。
今回の「メタがグーグルに1.5兆円発注」という事実は、単なるIT業界のニュースにとどまらない。日本のビジネスパーソンにとっても、次のような示唆を含んでいる。
・スピードが最大の武器になる
競合からでも「使えるものは使う」という柔軟性が、AI時代の成長企業に共通する。
・競争と協調の二重構造
かつての「敵か味方か」という二分法ではなく、状況に応じて協調も競争も使い分けることが重要になる。
・生態系で勝つ発想
単独で全領域を制覇するのではなく、自社の強みを軸にして最適なアライアンスを築くことが、AI時代の生き残り戦略となる。
メタの今回の決断は、AI時代における企業戦略の縮図といえる。かつては「GAFAM同士は敵」という単純な構図だったが、いまや彼らは競い合いながら、必要に応じて互いの力を借り合う「共進化」の関係にある。
そして、この動きはさらに複雑なアライアンスと競争を生み出し、次世代のAI覇権争いを形作っていくだろう。
ビジネスパーソンに求められるのは、「敵か味方か」の発想を超え、状況に応じて協調と競争を柔軟に使い分ける視点だ。AI時代の勝者は、スピードとアライアンスを制する企業──そして個人である。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小久保重信/ニューズフロントLLPパートナー)