「若者のSNS離れ」は幻想?“発信離れ”と“非公開化”でネット行動が再編

 東京大学・電通総研の共同調査(2024年)によると、若者のSNS投稿頻度は減少傾向にあるが、閲覧・保存・リポスト行動はむしろ増加。情報摂取の主要経路が検索からレコメンド(AIフィード)に置き換わり、「能動的検索」から「受動的接触」へと変化している。

 SNSは「発信する場」から、「情報を浴びる場」へ。この構造変化を誤って“離れ”と解釈するメディアが多い。

 総務省白書では、「SNSは社会基盤的機能を発揮している」と位置づけられた。これはもはやSNSが「娯楽アプリ」ではなく、ニュース接触、買い物、学習、趣味、推し活、地域防災、政治参加など、生活インフラの多層プラットフォームになっていることを意味する。

 特に若年層では、ニュース取得経路としてテレビを抜きSNSが1位(白書別章データ)。一方で信頼性を懸念する回答も増加しており、SNSリテラシー教育が政策課題になりつつある。

「離れ」ではなく「再編」:世代間ギャップの消失

 SNS普及初期には「若者が牽引」「高齢者は消極的」という構図だった。しかし2024年のデータでは、60代のX・Instagram利用が40%超。LINE利用率は9割を突破している。つまり「若者が離れた」のではなく、全世代が並び、世代差が縮小したのだ。

 この“分散化”の時代、企業やメディアが取るべき戦略は変わる。

(1)単一SNS依存をやめる
→ 複数プラットフォームを統合する「ストーリーフロー設計」が必要。

(2)エンゲージメントの再定義
→ 投稿の“いいね数”より、保存・DM共有・視聴完了率をKPI化。

(3)クローズド空間を活用
→ LINE公式、Discord、コミュニティ運営など“密度型接触”を重視。

(4)AIリコメンド時代のSEOからSOE(Social Optimization Engine)へ
→ 投稿が拡散される条件は「エモーション」と「文脈一致」。検索よりも“共感”が流通を決める。

「若者のSNS離れ」はキャッチーだが、実態は“再編と多層化”である。Xだけを見れば確かに発信量は減っている。しかし、LINEやInstagram、TikTok、YouTube Shortsを含めれば、SNS的時間は過去10年で減っていない。むしろ、社会のあらゆる場面に「SNS機能」が埋め込まれ、私たちはSNSから離れるどころか、SNSの中に生活している。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

参照
総務省『情報通信白書 令和7年版』第?部第1章第1節(コミュニケーションツール・SNS)
Pew Research Center “Teens, Social Media and Technology 2023?2024”
Ofcom “Online Nation 2024”
We Are Social & DataReportal “Digital 2024 Global Overview Report”
東京大学×電通総研「日本の若者SNS行動2024」