「2年間学んでも資格が取れない可能性が高い国」という評価が広まれば、日本を選択肢から外す外国人が増えるのは避けられない。
介護福祉士の国際比較でも、日本は「試験言語(日本語)」が最大の壁となっており、実技よりも言語能力に左右される点は海外から批判の声もある。
●国内の教育機関にも打撃
多くの養成施設は外国人学生を受け入れることで経営を維持している。経過措置終了で外国人の入学意欲が下がれば、施設の存続すら危ぶまれる。
社会保障の専門家で社会福祉士の高山健氏は、外国人が英語などで受験できるようにする制度設計が必要との見解を示す。
「国家資格の質を高める方向性自体は妥当です。しかし日本語試験がボトルネックとなり、本来の介護能力ではなく語学力で落とされる現状は国際的に見ても不自然です。言語支援の強化なしに経過措置を切るのはリスクが大きい」
また、外国人の介護職への就業を支援する行政書士でファイナンシャルプランナーの成瀬愛氏も、現状のままでは外国人の介護者は減ると警鐘を鳴らす。
「外国人材は『日本語試験が取れるかどうか』で進路が決まります。試験の難易度と実務の必要性が乖離しており、優秀な学生でも落ちる。経過措置がなくなれば、外国人介護人材の来日数は確実に減るでしょう」
介護業界が抱える課題は制度の枠組みだけではない。大きく分けて「待遇」「業務負担」「現場環境」の3点が依然として根深い。
(1)給与水準の伸び悩み
介護職の平均給与は30万円を超えつつあるが、夜勤・休日出勤が多い割に「他の職種と比較して高いとは言えない」。若年層の離職理由の多くが、給与と生活のギャップによるものだ。
(2)業務の過重負担
記録業務、利用者対応、家族への説明、生活支援など、多岐にわたる業務が常に人手不足とセットで発生する。結果として 新人が定着しない構造 になっている。
(3)ICT導入の遅れ
記録のデジタル化は進んだが、施設ごとに方式が異なるため “業務効率化の限界” が指摘されている。
人手不足の解消には、制度面の手直しと現場の改善が両輪で進む必要がある。ここでは、実現性の高い施策を整理する。
(1)試験制度の見直し(日本語ハードルの緩和)
・日本語N2保持者への一部科目免除
・日本語試験の簡素化や段階化
・介護実技評価を重視した“二段階資格制度”
語学力ではなく「介護の専門性」で評価する仕組みにすることが不可欠だ。
(2)現場改善(ICT・AI・ロボティクスの導入)
記録支援AI、見守りセンサー、移乗サポートロボットなど、すでに実装段階にある技術を標準化し、国が導入費用を補助する仕組みが求められる。
(3)外国人材の「生活支援」強化
・住居支援
・メンタルサポート
・地域コミュニティとの連携
・相談窓口の多言語化
外国人が長期定着する環境整備を進めなければ、単純な「受け入れ枠の拡大」だけでは意味がない。
(4)無資格者の活用とキャリアパスの明確化
介護助手、生活支援スタッフなど、無資格でも従事できる業務を明確化し、介護福祉士へのキャリアアップを支援する仕組みが必要だ。
政府もすでに複数の対策を進めている。
●介護職の給与引き上げ(補助金・処遇改善加算)
処遇改善加算を中心に給与を引き上げてきたが、「加算頼みの構造」は限界に達している。
●外国人材の受け入れ拡大(EPA・技能実習・特定技能)
日本語教育の不備や制度の複雑さが課題となっており、より一体的な政策設計が求められている。
●介護DXの推進
見守りセンサーの義務化検討や、介護ソフトの標準化など、業務効率化の流れは確実に強まっている。
制度改革によって介護福祉士の質を高めること自体は、利用者にとってもメリットが大きい。しかし、質を追求するあまり人材が枯渇しては本末転倒である。
介護の現場では、質よりも「人がいない」という状況が加速している。経過措置が完全に終了すれば、外国人材の認知が大きく変わり、介護の担い手はさらに減る可能性が高い。
解決の鍵は、「言語の壁を取り除きつつ、介護の専門性は丁寧に評価する柔軟な制度設計」だと言えるだろう。
日本が近い将来、世界で最も高齢化が進む国となることは確実だ。だからこそ、日本の介護制度はアジアのモデルケースとなるチャンスも秘めている。人材不足を逆手に取った革新的な制度とテクノロジー導入が、介護の未来を切りひらく可能性は十分にある。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)