スマホ新法で笑う業界はマンガ、婚活、推し活…6兆円市場の業界別・利益激変予想

【対抗:晴れ】マッチングアプリは「広告戦争」へ

 次に影響が大きいのが、ユーザー単価(ARPU)が高いマッチングアプリ・婚活サービスだ。月額数千円~数万円の課金モデルでは、30%手数料の重みは極めて大きい。

 ただし、この業界で起きるのは値下げ競争ではない。浮いた手数料は、そのまま広告宣伝費(CPA)に再投資される可能性が高い。

「この分野では、手数料削減=値下げにはなりにくい。むしろ広告の軍拡競争が激化し、資金力のある大手がさらにシェアを広げる構図になるでしょう」(広告アナリスト)

【大穴:急変】推し活とWeb3が迎える“開国”

① 推し活──「還元率」が最強の武器になる

 ライブ配信やVTuber市場では、投げ銭の多くがプラットフォーム手数料として差し引かれ、配信者に届くのは半分以下というケースも少なくない。

 自社決済が可能になれば、「推しに100%還元」を掲げる新興プラットフォームが登場する余地が生まれる。ファン心理に訴える強力な差別化要因だ。

② Web3・NFT──iPhoneが“開国”する日

 これまでアップルはNFT取引や外部ウォレット接続を厳しく制限してきた。これがWeb3ゲームやNFT会員権が普及しない一因だった。

 スマホ新法により、アプリ内でのトークン決済やNFT購入が可能になれば、iPhoneは巨大な“暗号資産端末”へと変貌する。

「これまでiPhoneは暗号資産に最も冷たい端末でした。もしアプリ内でNFT決済が自然にできるようになれば、Web3は一気にマス層に広がる可能性があります」(金融アナリスト・川﨑一幸氏)

リスク──EUの教訓と「自由」の代償

 先行するEUでは、デジタル市場法(DMA)施行後、アップルがコアテクノロジー料という新たな負担を導入した。結果として「結局App Storeに残る方が合理的」と判断した事業者も少なくない。

 また、自社決済を導入するということは、返金対応、サブスク管理、セキュリティ対策をすべて自社で担うことを意味する。自由にはコストが伴う。

 スマホ新法は、単なる値下げ促進策ではない。プラットフォーム依存から脱却し、自社の経済圏を構築できるかどうかを問う制度だ。

 重要なのは、法改正を待つことではない。アップル・グーグル抜きでもユーザーを集め、決済し、ファン化できる仕組みを今から設計できる企業だけが、6兆円市場“開国”の果実を手にすることができるだろう。

業界別・天気予報まとめ
 マンガ・電子書籍:快晴 ☀ 原価率が高く、手数料減が直利益に
 マッチング・教育:晴れ ☀ 広告投資競争が激化
 ライブ配信・推し活:一部快晴 🌤 還元率を武器に新興勢力が台頭
 Web3・NFT:急変 ⚡ スマホ普及で市場が桁違いに拡大する可能性

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)