自分はいったい何者なのか。
「自分はこういう人間です」と自分で自分のことを認識する概念のことをアイデンティティといいます。アイデンティティは、その人らしさを構築する柱となり、進路選択や就職が迫られる青年期に確立するといわれています。
けれども、青年期に確立したアイデンティティはその後も変化や転換を経て、成人期以降も発展するともいわれています。実際、30代を過ぎて、転職、結婚など、人生の転換期に「自分とは何者なのか」と改めて自分自身に問いかけることがあるでしょう。
アイデンティティが確立するまでには、様々な迷いや葛藤が生じて当然です。本当の自分なんて、そんなカンタンに見つからなくて当然。もっというならば、年老いて、人生の終焉を迎えても、やっぱり自分とは何者なのか分からないままだったなぁ、とつぶやいても全くおかしなことではありません。
本当の自分なんて、すぐに見つかるものではない。それでも、「人生をかけて探し続けることに意味がある」と私は考えています。
現代は、個性化、多様性の時代といわれます。「あなたはどんな人間ですか」と問われる場面も増えました。転職や婚活の際も、明確な自己アピールを求められます。
人生についての明確なビジョンが見出せない、自分の良い面について伝えられない、自分で自分という人間がよくわからないと落ち込む人も多いでしょう。
わからなくて当たり前なのに、「自己理解できていない自分はダメなのではないか」「本当の自分を見つけるべき」と考えると、焦りや不安がわいてきますね。
認知行動療法では、ねばならないというマスト思考や、べき思考が、焦りや不安を作り出すとされています。
「自分らしさとは何なのか、早く見つけるべき」「今すぐ答えが欲しい」と焦ってしまう人は、ちょっと一呼吸しましょう。焦って答えを探すより、客観的視点に立って自分と向き合う余裕を取り戻しましょう。
「探していくうちに、見つかればいっか」というくらいに構えて、これから一緒に、本当の自分、自分らしさとは何か探していきましょう。
ところで、「自分とはこういう人間です」と明確に答えられる人と、なかなか見つけられないで迷っている人との違いは、いったいどこにあるのでしょうか。
本当の自分を見つけられない理由として、次の3つを挙げたいと思います。
1つ目は、「自己肯定感の低さ」、2つ目は「希薄な人間関係」、3つ目は「同調性と他人軸」です。
今回は、1つ目の「自己肯定感の低さ」についてお話しします。
自分のことが嫌いな人は、自己肯定感情が低く、本当の自分を見出すことを困難に感じます。自分と向き合うと、悪いところばかりが目について、自分を非難、否定してしまうからです。
自己肯定感とはどのような感情でしょうか。
自己肯定感のことを、私は「これでいい。これがいい」というふうに表現しています。人は完璧ではありませんから、良いところもそうでないところも持ち合わせています。それが当たり前の姿です。「ちょっと残念な部分もあるけど、それもまた自分。自分らしいよね、それでいいじゃん。これが私。これがいい」という感覚を自己肯定感と私はとらえています。
自己肯定感の低い人は、人の目を気にしがち。自信がなく、「ひとり反省会」が得意技です。また、すぐにあきらめ、周囲に流される傾向があります。自分に自信がないので、自分なりの答えを出すのが苦手で、「正解」を欲しがります。知らないことや分からないことがあると、「なぜ」「どうして」と自分で考える前に、検索エンジンでサクッと調べて「答え」だけを求める傾向があります。