「日本のアニメやゲームをはじめとするカルチャーは、世界中で高い支持を得ており、動画メディアやSNSの普及によって、その広がり方や熱量は近年さらに加速していると認識しています」
一方で、流通の現場では課題も顕在化している。
「グローバル市場においては、その需要に対して『信頼できる商品が必ずしも十分に行き渡っているとは言えない』という課題があります。その結果、海外のファンが『本物かどうか判断しづらい』『価格が適正かわかりにくい』といった不安を抱えたまま、取引を行わざるを得ない状況が生まれてきました」
今回の提携は、単なる越境販売強化ではない。
「単に商品を海外に並べることが目的ではありません。日本で長年培われてきた文化的価値や専門性を、安心・安全なかたちで世界に届けるための流通基盤を構築することにあります」
最初の展開先として選ばれたのは、台湾・香港だ。
「まずは、台湾・香港のように日本カルチャーへの理解が深く、越境ECの受容度も高い市場から展開を進め、そこで得られる知見をもとに、今後のグローバル展開のモデルケースを築いていきたいと考えています」
駿河屋の鑑定力と在庫、メルカリの越境EC基盤。この組み合わせによって、「世界中のファンが、まるで日本の店舗で商品を選ぶかのような信頼感をもって購入できる環境」をつくることが狙いだ。
数百万点規模の商品を扱ううえで、テクノロジーの役割は大きい。
「数百万点規模の専門的な在庫を世界中に展開するには、テクノロジーによる支援が欠かせません」
メルカリは、AIを活用して駿河屋の商品カタログを多言語化・最適化し、出品や検索の精度を高める方針だ。
「また、鑑定についてもAIの活用で精度向上を検討しています」
“人の目”と“AI”を組み合わせることで、スケールと信頼性の両立を図る。
実店舗を中心に展開してきた駿河屋にとっても、今回の提携は大きな意味を持つ。
「実店舗を中心に展開してきた駿河屋にとって、今回の提携は、店舗で培ってきた専門性や在庫の価値を、より広い市場に届けていくための新たな選択肢だと考えています。地域や国境といった物理的な制約を超え、これまで接点のなかったお客さま層にも価値を届けられる可能性が広がります」
特に、日本のアニメやホビーへの関心が高い一方、流通インフラが未成熟な北米やアジア圏では、両社の強みが生きるという。
米国などで検討されているリアル店舗について、メルカリは次のように語る。
「単なる販売の場というよりも、日本のエンタメ・ホビーカルチャーや、その品質基準を体験できる場所としての役割を想定しています」
リアルな体験を通じて、「オンラインでの取引に対する理解や信頼を高め、マーケットプレイス全体の活性化につなげていきたい」という考えだ。
今回の提携を通じてメルカリが目指す姿は明確だ。
「単なる取引の場を超え、日本の多様な文化的価値を、最も信頼できるかたちで世界へ届ける流通の基盤となることです。国境を越えて、安心・安全にモノの価値が循環する社会を実現するため、駿河屋さんとともに、日本のリユース文化を世界へ広げていきたいと考えています」
「悪魔合体」という刺激的な言葉の裏側にあったのは、日本のコンテンツ流通を次の段階へ引き上げようとする、極めて現実的で長期的な戦略だった。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)