日本初「現金化できるデジタル円」爆誕…金融鎖国ニッポンの“開国”とAI時代の決済革命

 従来のSWIFT送金は着金まで1~2日。ステーブルコインならほぼ瞬時だ。これが貿易や投資の実務を大きく変える。

●JPYCの強みは「銀行がやりたくてもやれないモデル」

――Progmatなど信託銀行系もステーブルコインを準備しています。JPYCの優位性は?

岡部氏:「金融機関には“イノベーションのジレンマ”があります。ステーブルコインが普及すると、銀行収益の柱である為替手数料や送金手数料が減る可能性があるからです。一方、私たちは手数料ビジネスではありません」

――では、収益源はどこに?

岡部氏:「裏付け資産(国債等)の利息です。例えば、1兆円発行すれば裏付け資産1兆100億円程度が生まれ、その1%の利回りで100億円の収益になります。“手数料ゼロで成立するビジネス”なので、普及させやすいモデルなんです」

 銀行ではなくスタートアップが第1号を取れた理由が、ここにある。

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●AIが支払う時代に必須の“プログラマブルマネー”

――どんな企業がステーブルコインを強く求めていますか?

岡部氏:「貿易・投資の世界がまず大きいですね。外為手数料が高く、着金が遅いという悩みは共通しています。また最近はAIエージェントが自動で支払う世界が視野に入ってきています」

 AIが判断し、必要な瞬間に自動で決済する??従来の銀行振込やハンコ文化では到底対応できない世界だ。

●「規制は壁ではない」金融庁との“正面突破”の6年

――最初は前払い式からのスタートでしたが、金融ライセンス取得までの道のりは平坦ではなかったはずです。

岡部氏:「極意はシンプルで、『正面から行く』ことです。多くの企業は規制を前にすると引き返してしまう。でも私たちは金融庁のドアを何度もノックし続けました。私自身が電話し、足を運び、“なぜダメなのか”を徹底的に聞き、論点を一つずつ潰す」

――心が折れそうになった瞬間は?

岡部氏:「一番危なかったのは2022年の法改正です。『ステーブルコインは銀行だけが発行すべき』という議論も強く、もしそう決まっていたら私たちは道を断たれていました。“スタートアップにも挑戦の余地を”と訴え続け、ギリギリで道が残った。まさに首の皮一枚でした」

 ここで道が閉ざされていれば、JPYCは銀行の下請けになるか、安価に買収されて終わっていた可能性がある。

●給与払いも“デジタル円”へ。普及は一気に加速する

――今後、ステーブルコインはどこまで浸透すると見ていますか?

岡部氏:「労働法上、一定の条件を満たせばステーブルコインでの給与払いも可能です。外国人が多い企業、フリーランスへの即時支払いなどで広がるでしょう。グローバル市場はすでに49兆円規模で、今後10倍になるとも言われています。AIが当たり前になったように、『ステーブルコインを使わない企業は存在しない』という時代が必ず来ます」

 最後に、読者へのメッセージを求めると、こう返ってきた。

岡部氏:「日本円のステーブルコインが広がらないと、日本は大きく国益を損ないます。
JPYCはすでに誰でも使えます。“お金のデジタル化”の波に、どうか乗り遅れないでほしい」

日本の“決済インフラの形”が変わる

 銀行送金に頼ってきた日本企業の資金移動は、ここから数年で急激に変わる。

 ・海外送金は“数日→ゼロ秒”へ
 ・AIが自動で決済する世界が本格化
 ・越境EC・貿易のキャッシュフローが改善
 ・給与、報酬、投資、あらゆるお金の流れがデジタル化
 ・世界のドル・ユーロと日本円が同じレイヤーでつながる

 今回の第1号ライセンス取得は、その転換点だ。「金融鎖国の終わり」と言っていい。JPYCは、その幕を開ける最初のプレイヤーとなった。

(構成=BUSINESS JOURNAL編集部)