全国ではしばしば食中毒が起きているにもかかわらず、なぜ肉の生食を提供する飲食店は多いのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏は言う。
「大きな理由としては、飲食店として新鮮なものを扱っているというプラスのイメージを打ち出したいという狙いがあります。そして、やはり日本人の間では生食は人気が高いというのも理由の一つです。このほか、生食も提供できるとメニューのバリエーションの幅が広がり、集客上の武器にもなります。ある食材について生食メニューを食べたお客さんが、『これは美味しいので、焼いたものや揚げたものも食べてみよう』という感じで他のメニューを注文してくれることで客単価の上昇も見込めます。
こうしたメリットがある半面、衛星管理が非常に大変になってくるというデメリットもあります。信頼できる業者から仕入れる必要がありますし、マニュアルをつくって温度管理や湿度管理を厳格に行い、『●%の塩水に●分浸ける』といったルールに則って食材管理や調理を行っていくのはコストと労力がかかります。ですので、こうした手間や食中毒リスクを勘案して生食の提供をやめるという判断をする店もあります」
食中毒を発生させてしまう店には、大きく2パターンあるという。
「衛生管理を甘く見ている店が少なくないのは事実です。一方で、かなり厳格に衛生管理を徹底していても食中毒を起こしてしまう店もあります。どれだけしっかりと火を入れても、お客さんに提供される料理が100%無菌状態ということはあり得ず、たとえばお客さんが食べるときにたまたま体力が弱っていて抵抗力が下がっていれば、食中毒が起きてしまうということもあります。しっかりと火を通せば、その分、食中毒リスクは減りますが、肉料理の場合は火を通すとパサついたり硬くなり味や食感が悪くなってしまうこともあり、食中毒リスクの低減と料理のクオリティのバランスをどうとっていくのは難しいところでもあります」(江間氏)
“本当に危険な店”も存在するという。ある飲食店オーナーはいう。
「法律で禁止されているにもかかわらず、裏メニューとして牛レバーを提供して、それをウリにしている店や、料理のクオリティで勝負できないため、とにかく生食だけをウリにするといった店もあります。牛レバーなどを好む人は一定数いるので致し方ない面はあるものの、そうした店は、やはりお客さんの安全をおざなりにして集客を優先しているといえ、避けたほうが無難でしょう。食中毒は重いと後遺症が残ったり、特に子どもや高齢者など抵抗力の弱い人は死亡リスクもあるため、生食をナメるのは禁物です」
あくまでも肉の生食は自己責任で。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表)