加速するアマゾン離れ、EC戦略に大きな変化…205億ドル市場に膨らむAI購買

加速するアマゾン離れ、EC戦略に大きな変化…205億ドル市場に膨らむAI購買の画像1

●この記事のポイント
米国でAIエージェント「Buy for Me」やPerplexity訴訟を契機に、アマゾンを経由しない購買「アマゾン飛ばし」が加速。エージェント型コマースは2026年に米国だけで205億ドル規模へ急拡大。日本でもD2C市場が3兆円に達し、EC市場の権力構造が転換期を迎えている。

「アマゾンで検索して買う」という、これまで当たり前だった消費行動が崩壊を始めている。

 米国ではOpenAIやPerplexityといったAI企業が、アマゾンの検索窓を経由せず、直接ブランドから商品を購入する機能を次々と実装。この「AIエージェント」による購買代行は、既存のEC王者が築き上げた検索連動型広告モデルを根底から揺るがしており、シリコンバレーでは法廷闘争へと発展している。

 翻って日本でも、D2C(Direct to Consumer)市場が2025年には約3兆円規模に達すると予測され、SNSからブランドの世界観に直接触れ、自社サイトで購入する流れがZ世代を中心に定着した。もはやアマゾンは「唯一の入り口」ではなく、数あるチャネルの一つ、あるいは単なる「物流インフラ」へとその役割を縮小させつつある。

 本稿では、米国の最新データと日本国内の構造変化を重ね合わせ、「アマゾン一強時代」の終焉と、その先に待つEC市場の新たな覇権争いを分析する。

●目次

米国で起きていること――AIがアマゾンを”迂回”する

 きっかけとなったのは、日本経済新聞も報じた米国の最新動向だ。米テック業界では今、「Amazon Bypass(アマゾン迂回、アマゾン飛ばし)」という言葉が現実味を帯びている。

AIエージェントが購買の入り口を塗り替える

 2025年、主要なAI企業は「エージェント型コマース」の基盤を完成させた。OpenAIはChatGPTに直接チェックアウト機能を埋め込み、ユーザーが「キャンプ用のテントを探して、予算3万円以内で一番評判の良いものを買っておいて」と指示するだけで、複数のサイトを比較し、決済まで完了させる仕組みを整えた。

 特筆すべきは、OpenAIがTargetやInstacartといった大手小売と直接提携したことだ。これにより、消費者はアマゾンの広大な検索結果からスポンサー広告をかき分けて商品を探す手間から解放され、ChatGPTのチャット画面を一度も離れることなく買い物を完結できるようになった。

「アマゾン飛ばし」の核心は広告モデルへの打撃

 なぜこれがアマゾンにとっての死活問題なのか。その答えは収益構造にある。アマゾンの2024年〜2025年の広告売上は年間約600億ドルから700億ドル規模に達しており、その大半は「検索結果の上位に表示させる」ための検索連動型広告だ。

 しかし、AIエージェントは人間のように画面上の広告を視認しない。AIは裏側のデータを読み取り、純粋にユーザーの要望に合致する「最適解」だけを抽出する。アマゾンがPerplexityに対し、コンテンツの不正利用やスクレイピングを巡って厳しい姿勢を見せている本質的な理由は、自社の検索エコシステム(=広告収益の源泉)がバイパスされることへの強烈な危機感にある。

自らも「飛ばし」に参入するアマゾンの矛盾

 一方で、アマゾン自身も防衛策として奇妙な行動に出ている。「Shop Direct」や「Buy for Me」といった機能の試験運用だ。これはAIが他社のECサイトから商品を勝手に探し出し、アマゾンのインターフェース内で購入を完結させるもの。