●この記事のポイント
ホンダは中国・東風ホンダ製EV「インサイト」を日本で発売(価格550万円、補助金適用で実質420万円、3,000台限定)。EV事業で最大2.5兆円損失見通しのなか、中国生産車の逆輸入でラインアップ補完と収益改善を図る。トヨタや日産も中国連携を強化し、日本のEV普及率2.66%という遅れを背景に「短期は中国技術活用、長期は全固体電池」で巻き返しを狙う構図が鮮明になっている。
4月17日、ホンダがある「歴史的な一歩」を踏み出した。中国の合弁会社「東風ホンダ」が生産したSUV型EVをベースに右ハンドル化・国内仕様に改めた新型「インサイト」を、日本で正式に発売したのだ。希望小売価格は550万円。国のEV補助金130万円が適用され、実質420万円で手に入る。販売台数は3,000台の数量限定だ。
日本車メーカーが中国で生産したEVを国内に輸入・販売するのは今回が初めてのことだ。そしてそれが、1999年に世界初のガソリン・ハイブリッド車として登場した「インサイト」という名を冠していることの意味は重い。かつてエコカーの象徴だったその名が、今度は「中国製EV」として帰ってきた——。この事実が、日本の自動車産業が置かれた現在地を、端的に示している。
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逆輸入に至った背景には、二重の文脈がある。
一つは「品ぞろえの穴埋め」という現実的な事情だ。ホンダはEVに力点を置く戦略の見直しを発表したが、国内では品ぞろえが不足しており、ラインアップを拡充する必要があった。さらに、販売が不振に陥った中国の工場稼働率を高める狙いも重なっている。
もう一つは、より深刻な財務上の現実だ。ホンダは2026年3月期に、EV関連の巨額損失として最大2兆5,000億円を計上する見込みであり、1957年の上場以来初の最終赤字に転落するとみられている。米国で生産予定だった「Honda 0 SUV」「Honda 0 Saloon」「Acura RSX」の3車種の開発・発売を中止した結果、2026年3月期の連結業績で8,200億〜1兆1,200億円の営業費用、さらに1,100億〜1,500億円の持分法による投資損失を計上する見込みだ。
こうした状況の中での「中国産インサイト」投入は、矛盾しているように見えて、実は合理的な判断でもある。自前の大型EV開発が白紙に戻る一方で、中国での合弁資産は既に存在している。それを活用し、「今すぐ売れるEV」を国内に供給することは、短期的な赤字を和らげる現実解だ。
「EV開発における最大の競争力は、いまや開発スピードと規模の経済にあります。中国メーカーが約2年で新型モデルを市場投入するなか、独自開発に固執し続けることのリスクと、提携によって学習しながら時間を稼ぐリスクを比較衡量した結果が、今回の逆輸入という選択といえます」(自動車アナリスト・荻野博文氏)
「中国技術の活用」はホンダだけの話ではない。業界全体のトレンドを俯瞰すれば、日本の主要3社が各々の流儀で中国との連携を深めていることが浮かび上がる。
トヨタ——「共創」で時間を買う
BYDとトヨタが2020年に設立した合弁会社「BYD TOYOTA EVテクノロジーカンパニー(BTET)」は、BYDのEV市場での競争力・開発力と、トヨタの品質・安全という強みを融合し、電気自動車の研究開発を共同で進めている。bZシリーズはその成果の一部だ。