ホンダ、2.5兆円損失でも評価されるワケ…日産・いすゞ連携で描く再成長シナリオ

 つまり、全固体電池は「クルマのための技術」ではなく、二輪・四輪・空飛ぶクルマ(eVTOL)・ロボティクスを貫く「共通言語」として位置づけられている。この視点で見れば、ホンダが目指しているのは「自動車メーカーとしての成長」ではなく、バッテリー技術を核とした「モビリティ・エネルギー企業への変態」だと解釈できる。

「全固体電池の量産化競争では、トヨタや日産が先行している面もありますが、ホンダが二輪・四輪・航空機というポートフォリオ全体でスケールを出せれば、コスト構造で逆転する可能性があります。技術の汎用性と用途の幅広さは、ホンダの最大の武器になりうる」(同)

ホンダは「普通の会社」になったのか?

 かつてのホンダは「技術の本田」として、独善とも言えるほどの自前主義を貫いた。それが時代の要請に合わなくなったとき、どう変われるか——今回の一連の判断はその問いへの回答である。

 赤字計上も、日産との経営統合破談も、いすゞとのFCトラック延期も、表面だけ見れば「計画の失敗」に映る。しかし一段深く掘り下げれば、いずれも「変わりゆく現実に合わせてリソースを組み替える」という経営の本質的な作業だ。

 ホンダが示したのは、成功体験を持つ大企業が「自己否定」を行う難しさと、それをあえて実行する意思決定の重さである。独善的な自前主義を捨て、水平連携と技術の汎用化によって生き残りを図る——その姿は「かつての輝き」とは異なるかもしれない。しかし、現実に根ざした強さを模索する企業としての成熟を示してもいる。

 成功体験は、時として最大の障壁になる。ホンダが「6900億円」という痛みをもって示したのは、いかに大きな組織でも「現実を見て変わる決断」を先送りすることが、最終的により大きなコストを生むという、古くて新しい経営の真理である。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=荻野博文/自動車アナリスト)