味の素・ダイキンがアジアで成功できた要因…海外展開が失敗する企業と何が違うのか

 タイのカセムサハシン氏は、現地の変化をデータで示した。タイはいまASEAN最大のVOD市場となり、情報は動画で消費される時代になった。ナノ・マイクロインフルエンサーを通じたコミュニティ型マーケティングが主流になりつつあり、本社発の硬直したメッセージでは若い世代に届かない。

 3人の言葉を貫く共通点は1つだった。日本ブランドへの信頼という「資産」は確かにある。しかしその資産は、現地のコンテキストに乗せて初めて動く。乗せる努力をしなければ、信頼は信頼のまま眠り続ける。

 4つのセッションを通じて、会場が繰り返し聞いた言葉がある。「変えるものと、変えないもの」だ。

 味の素がアミノサイエンスを変えずに各国のおいしさを科学した。ダイキンがR32の技術を手放さずにルールを作った。KADOKAWAが日本IPの本質を守りながら届け方を現地に委ねた。ロッテが品質のDNAを保ちながら色と形と温度に適応した。

 その境界線は誰かが引いてくれるものではない。現場で、データで、対話で、少しずつ育てていくものだ。アジアの6億人はすでにそこにいる。あとは、その人たちが信じているものに、誠実に向き合う覚悟があるかどうかだ。

(取材・文=昼間たかし)