ソフトバンクGがフランスに14兆円を投じた理由…電力不足の米ビッグテック、周回遅れの日本

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●この記事のポイント
ソフトバンクグループが2026年5月、フランスに最大14兆円・5GW規模の欧州最大AIデータセンター建設を発表。選定の決め手は、原子力比率67%を誇るフランスの安定・低炭素電源だ。米ビッグテックが電力不足で原発依存に追い込まれる中、Arm・OpenAI・計算インフラを垂直統合する孫正義氏の戦略と、日本が抱える電力制約の構造問題を多角的に検証する。

 5月30日(現地時間)、ソフトバンクグループ(SBG)がフランスで最大750億ユーロ(約14兆円)を投じ、出力5ギガワット(GW)のAIデータセンターを建設すると発表した。同社にとって欧州最大のAIインフラ投資であり、エマニュエル・マクロン大統領が主催する「Choose France 2026」サミットの目玉案件として世界に発信された。

 なぜ日本企業であるSBGが、国内でも米国でもなく、フランスを最大規模の投資先に選んだのか。その背景には、生成AI普及が引き起こした世界的な電力争奪戦、孫正義会長兼CEOのグローバルなインフラ戦略、そして日本が抱える構造的課題が交差している。

●目次

AIインフラを蝕む「電力の壁」

 国際エネルギー機関(IEA)によれば、ChatGPTへの1回の問い合わせに必要な消費電力はGoogle検索の約10倍に相当する。IEAの試算では、世界のデータセンターの電力消費量は2026年時点で2022年比の2倍超に膨らむ見通しだ。

 主要テック企業各社が2026年にAIデータセンターへ投じる額は6,500億ドルに上るとも推計されているが(AI data center市場調査)、問題は「計算機を並べる金があっても、動かす電力が足りない」という現実だ。

 ボストン コンサルティング グループの報告書(2026年版)は、この矛盾を端的に指摘している。データセンターの開発期間は通常2〜3年だが、送電網の整備には4〜8年を要する。この「時間的ギャップ」が、米国を中心に電力契約の「数年待ち」を生み出し、新規データセンターの稼働を阻んでいる。

 こうした状況を受け、米国のハイパースケーラーは異例の手段に出ている。Microsoftは1979年の炉心溶融事故で知られるスリーマイル島原発の再稼働による電力供給契約を締結。Google、Amazonも10〜20年規模の長期原子力購入契約を相次いで結んでいる。米エネルギー情報局(EIA)は、2025〜2026年に米国の電力消費量が過去最高を更新すると予測しており、その主因はデータセンターの電力需要急拡大とされる。

「電力の確保こそが、次世代AIインフラの最大の競争軸になっています。いかに高性能なチップを積んでも、安定した電力供給なしにスーパーコンピュータは動きません」(エネルギー政策研究家・佐伯俊也氏)

なぜフランスなのか — 原発大国の「稀少価値」

 電力確保が世界中で争奪戦となっている今、SBGがフランスを選んだ理由は明確だ。

電源構成の圧倒的な優位性

 2024年時点でフランスの原子力発電比率は約67%と世界首位(GLOBAL NOTE調査)。国内56基の原子炉を稼働させ、欧州最大の電力輸出国でもある。さらにマクロン政権は2026年2月、原子力比率引き下げ方針を事実上撤回し、既存炉の長期運転と最大14基の新増設を盛り込んだ第3次エネルギー複数年計画(PPE3)を発令した。原子力は変動しない「ベースロード電源」として24時間365日の安定供給が可能であり、太陽光・風力のような出力変動がない。