●この記事のポイント
フジ・メディア・ホールディングスとSBIホールディングスが資本業務提携協議を発表。SBIはすでにフジ株7%を握る大株主で、1000億円規模のIPファンド参画も検討。日テレ×ジブリ、テレ朝×KDDI、TBSの不動産事業と比較しながら、87億円の営業赤字・アクティビスト対策・地方局再編という3つの視点から、フジが「金融」を選んだ理由を分析する。
フジ・メディア・ホールディングス(FMH)とSBIホールディングスは6月26日、メディア・コンテンツ領域における戦略的資本業務提携に向けた協議・検討を開始したと発表した。多くの報道は、ドラマやアニメの共同制作、知的財産の海外展開といった「協業内容」に焦点を当てている。
しかし、この提携を単体で見ていては本質を見誤る。日本テレビはスタジオジブリを、テレビ朝日はKDDIを、TBSは不動産を、それぞれ生き残りの拠り所としてきた。地上波の広告モデルが構造的に縮小するなか、キー局各社は今、自局の枠を超えた「異業種連合」に活路を求めている。フジが選んだ相手が「金融」だったことの意味を、他局の選択と比較しながら読み解きたい。
●目次
(1)日本テレビ×スタジオジブリ コンテンツで勝負する王道路線
2023年9月、日本テレビ放送網はスタジオジブリの株式を取得し、議決権ベースで42.3%を持つ筆頭株主として子会社化した。きっかけは宮﨑駿監督(当時82歳)と鈴木敏夫プロデューサー(同75歳)の高齢化に伴う後継者問題で、純粋な事業戦略というより長年の信頼関係が土台にある。とはいえ結果として日テレは、世界的評価の高いIPを自社グループに取り込むことに成功した。強みは圧倒的なコンテンツ力だが、稼ぐ手段は依然として広告・配信という既存モデルの延長線上にあり、制作費の高騰やヒットの波に業績が左右されやすいという弱点は残る。
(2)テレビ朝日×KDDI 通信インフラと組む配信直結型
テレビ朝日とKDDIは2019年末に動画配信会社TELASAを50%ずつの出資で設立し、2020年春からサービスを開始した。5G時代の動画配信を通信キャリアと二人三脚で先導する狙いだが、KDDI自身がNTTドコモやソフトバンクとの通信・配信競争にさらされる立場にあり、キャリア側の経営判断にテレビ局側が影響を受けるリスクは常につきまとう。
(3)TBSホールディングス 不動産で稼ぐ延命型
TBSは三菱地所と共同で、本社のある赤坂駅前一帯を再開発する「赤坂二・六丁目地区開発計画」を進めている。地上40階・高さ約206mのオフィス棟と、地上18階・高さ約100mの劇場・ホテル棟からなり、2028年の完成を予定する。放送収入が伸び悩むなか、不動産事業はTBSの利益を支える大きな柱になっており、ある年度の決算ではメディア・コンテンツ事業と不動産事業の合計が連結営業利益の85%を占めた。経営の安定度は高いが、メディア事業としての成長性という点では限定的だ。
対してフジが選んだ相手はSBIホールディングスという総合金融グループだった。SBIグループは既にフジ株の約7%をグループ全体で保有する大株主であり、その関係は2005年、ニッポン放送株買収騒動の際に北尾吉孝会長兼社長が「ホワイトナイト」としてフジ側を支援した経緯にまで遡る。今回の提携では、ドラマやアニメの共同制作、知的財産のグローバル配信に加え、SBIが組成を進める1000億円規模のメディア・IP投資ファンドへのフジの参画も検討されている。