JERAとグーグルが挑む「再エネ証明」の新標準…1時間単位トラッキングの実証実験

再エネ証明の技術が持つ3つの意味

 この技術がもたらす意味は、単なる環境技術の高度化にとどまらない。ビジネスの現場で押さえておくべきポイントは大きく3つある。

 第一に、グリーンウォッシュ批判への耐性強化だ。 投資家や取引先による環境情報の精査は年々厳しくなっており、年間総量での「再エネ100%」という主張だけでは説得力を持ちにくくなりつつある。時間単位で裏付けられた証明を持つことは、対外的な信頼性を高める材料になり得る。

 第二に、サプライチェーン全体(Scope3)での差別化要因になり得る点だ。 グーグルのようにグローバルで24/7 CFEを追求する企業は、自社の目標達成のために取引先にも同様の水準を求める可能性がある。時間単位の再エネ証明に対応できる体制を早期に整えることは、国際的な取引関係において選ばれる要件の一つになっていくと考えられる。

 第三に、電力需給の最適化を通じたコスト面のメリットである。 発電・需要データが時間単位で可視化されることで、再エネが豊富で電力価格が下がりやすい時間帯に生産活動やデータ処理を寄せるといった、企業のデマンドレスポンス(需要側での電力使用の最適化)を後押しする材料にもなる。

実用化への課題と今後の展望

 もっとも、この仕組みが日本全体に広がるまでには、いくつかの課題も残る。時間単位でのデータ突合を支えるスマートメーターの普及や、制度設計、データ連携コストの負担など、社会インフラ側の整備が欠かせない。今回の実証でも、実証場所や供給電力量といった詳細は公表されておらず、あくまで基盤技術としての検証段階にあることがうかがえる。

「1時間単位でのトラッキングは、再エネの実態をより正確に映し出す点で意義が大きい。ただし、国内で広く使われるようになるには、非化石証書制度との整合性や、データを扱う事業者間の標準化が課題になるだろう。GHGプロトコルの改訂動向を注視しながら、段階的に対応を進める企業が増えていくのではないか」(エネルギー政策研究家)

 この分野は一部の大企業やIT企業だけの話ではない。GHGプロトコルの改訂が実現すれば、時間単位での再エネ利用証明が事実上の前提となる時代が訪れる可能性がある。エネルギー調達の担当者は、自社の脱炭素戦略を「年間の総量」でとらえる発想から、「時間軸」でとらえる発想へと、今のうちから視点を広げておく価値があるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=佐伯俊也/エネルギー政策研究家)