ガンプラ塗料の「GSIクレオス」が挑む次世代太陽電池…ペロブスカイトの対抗馬か

 これに対しOPVは、炭化水素を中心とした有機化合物のみで構成され、鉛などの有害物質を含まない。GSIクレオスが手がける半透明OPVモジュールは、重さ1平方メートルあたり0.5kg程度と、PSCの半分以下という軽さが特徴だ。ロール・ツー・ロール印刷技術による製造ゆえ薄く曲げられ、丸めることもできるため、耐荷重の低い既存ビルの壁面や窓ガラス、ロールカーテンなど「シリコン系太陽電池では設置が難しかった場所」に展開しやすい。透明度が高くカラーバリエーションも作れるため、都市部の景観を損ないにくい意匠性も評価されている。

それでも立ちはだかる「効率・寿命・コスト」の壁

 もっとも、無条件にOPVが優位というわけではない。第一に、変換効率の低さだ。PHDが手がける量産型半透明OPVの現状の変換効率は7〜8%程度で、2030年までに15%以上を目指す計画だが、実験室レベルで26%を超え、タンデム型では30%台に達するPSCとの差は依然として大きい。同じ面積で得られる電力量が少なければ、投資回収期間は長くなる。

 第二に、有機材料ゆえの耐久性の課題である。紫外線や水分、熱による劣化はプラスチック同様に避けがたく、シリコン系太陽電池が20年以上の耐用年数を持つのに対し、有機系材料の長期耐久性の確立は発展途上にある。

 第三に、量産化コストをめぐる「鶏と卵」のジレンマだ。安価に供給するには大量生産が前提となるが、価格が下がらなければ建材メーカーやゼネコンといった採用側の重い腰は上がりにくい。GSIクレオス自身、2025年からの実証実験を経て投資判断を固める段階にあり、事業化の可否は今後2〜3年の実証結果に左右される。

 太陽電池材料に詳しいエネルギー政策研究家の佐伯俊也氏は、こうした次世代太陽電池の位置づけについて次のように述べる。

「ペロブスカイトとOPVは競合というより、適材適所で棲み分ける技術だと捉えるべきだ。ペロブスカイトが変換効率を武器に大規模発電や屋根置き用途を狙うのに対し、OPVは軽さと透明性を生かした建材一体型や窓向けの用途に強みがある。どちらも量産段階でのコストと耐久性の実証が普及の鍵を握る」

老舗商社の事業転換モデルとなるか

 ペロブスカイトが環境規制という壁に直面する可能性がある一方で、OPVがビル壁面やモビリティ分野でニッチな地位を築けるかどうかは、これからの実証データ次第だ。繊維・商社セクターが構造変化を迫られる中、GSIクレオスが「持続可能な社会のインフラを支える事業創造者」へと自らを再定義できるかは、単なる一企業の挑戦にとどまらず、日本の商社が技術と事業をどう結びつけていくかを占う一つの試金石になるだろう。

 2029年度の量産開始という目標に向け、実証実験の進捗、コスト低減の道筋、そして建材・自動車業界からの採用実績——これらの積み重ねを、今後も注視していく必要がある。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=佐伯俊也/エネルギー政策研究家)