
●この記事のポイント
2026年11月施行の消費税免税制度改正「リファンド方式」に伴い、ソフトバンク系がPOS・決済端末連携と免税代行、還付金のキャッシュレス送金までを一括受託する動きを解説。JPrefundの事例や観光庁のインバウンド消費データ(9.4兆円)を踏まえ、決済インフラと還付金の流れを誰が握るかという構造変化を分析する。
2026年11月1日、日本の消費税免税制度が抜本的に変わる。これまで訪日外国人旅行者が店頭でその場で消費税抜きの価格を提示されていた「即時免税方式」が廃止され、いったん税込み価格で購入し、出国時に税関で持ち出しが確認された後に消費税相当額が返金される「リファンド方式(事後還付型)」へと移行する。不正な免税転売を防ぐことなどを目的とした、令和7年度税制改正に基づく制度変更だ。
この地味に見える制度改正に、通信大手ソフトバンク系が急速に食い込んでいることが明らかになった。日本経済新聞の報道によれば、ソフトバンクは免税店に代わって新制度対応の事務手続きを一括代行し、消費税分をキャッシュレスで返金できるサービスを、提携先のシステム会社とともに既存顧客2500社に売り込み、新規開拓も進めているという。
一見すると「面倒な事務代行を請け負う裏方ビジネス」に映るが、その先には決済・データという同社の本業に直結する狙いが透けて見える。今回の制度改正が、なぜ通信キャリア系企業にとって“商機”となるのか。そのからくりを整理する。
●目次
リファンド方式への移行は、免税店の現場に少なからぬ負担を強いる。従来は店頭で消費税抜きの価格を提示すれば手続きが完了していたが、新制度では税込み販売後に旅行者の本人確認情報や購入記録を管理し、税関の承認情報とオンラインで連携させ、還付判定を行う仕組みが必要になる。SBペイメントサービスとスマートテクノロジーズ&リソーシーズが共同で提供する「JPrefund」の説明でも、免税システムの改修や税関とのデータ連携、旅行者への返金手段の整備には一定の準備期間が必要になると説明されている。
こうした事務負担を丸ごと引き受け、POSシステムや決済端末との連携までセットで提供するのが、ソフトバンク系の狙いだ。中小から大手まで幅広い小売店舗を自社の決済インフラに紐づけることができれば、決済手数料収入やシステム保守料といった継続的な収益源を長期にわたって確保できる。免税代行という「入口」を握ることは、店舗の決済・データ基盤そのものを握ることに直結する。
「免税手続きの代行自体は薄利なビジネスだが、それをきっかけにPOSや決済端末の入れ替えまで受注できれば話は別だ。制度変更という“強制イベント”は、決済事業者にとって店舗の切り替えコストを一時的に下げる稀有な機会になる」(戦略コンサルタント・高野輝氏)
もう一つの狙いは、還付される消費税相当額そのものの流れにある。観光庁の「インバウンド消費動向調査」(2025年暦年確報)によれば、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4549億円と過去最高を更新し、前年比16.4%増となった。この規模の消費に付随する消費税還付額も相応の規模に上るとみられる。
JPrefundのプレスリリースでは、税関で持ち出しが確認された後、旅行者はクレジットカードや海外向けウォレットなどキャッシュレスで消費税相当額を受け取れるようになると説明されている。ここで焦点となるのが、還付先として想定される決済手段だ。PayPayをはじめとする自社系QRコード決済や、提携する海外QR決済事業者を還付ルートに組み込むことができれば、返金された資金は旅行者の手元に留まり続け、次回訪日時の決済や自社の決済網の中で再び循環する可能性がある。単なる代行業務にとどまらず、「出入国という金融の接点」に自社の経済圏を差し込む発想と言える。