「還付金の受け皿をどの決済手段にするかは、旅行者にとっては利便性の問題だが、事業者にとっては顧客との接点をどこで維持するかという競争そのものだ」(同)
免税還付ビジネスにはすでに欧州発のグローバルブルーなど外資系大手が存在し、現金受け取りやカードへの返金、WeChat PayやAlipay+へのデジタルウォレット返金など多様な手段を提供してきた実績がある。一方、国内では全国免税店協会が「対応A〜対応C」として返金業務に対応予定の承認送信事業者(返金事業者)を公表する動きもあり、複数のプレイヤーが名乗りを上げる状況だ。
そうした中でソフトバンク系が優位に立ちうるとすれば、国内の決済端末導入実績と、PayPayをはじめとする自社の決済網、さらに通信キャリアとしての法人営業チャネルを併せ持つ点にある。もっとも、POSベンダーや既存の免税システム事業者との連携・競合も今後の焦点になるとみられ、現時点で特定の事業者が市場を独占すると断定できる段階にはない。単なる「免税代行」だけでなく、「決済端末+データ連携+還付手段」を一体で提供できるプレイヤーへの集約が進むかどうかが、今後の見どころだろう。
第一に、「その場値引き」が消える心理的な影響が挙げられる。これまでは購入時点で即座に消費税分が差し引かれる「お得感」があったが、新制度では出国時の手続きを経てようやく資金が戻る「後払いの手間感」に変わる。高額品や、いわゆる“ついで買い”を抑制する方向に働く可能性がある。
第二に、還付された資金が国内で再消費されない可能性だ。出国後にキャッシュレスで返金された資金は、旅行者の自国での日常的な買い物に使われる可能性が高く、日本国内での二次消費の機会は従来より限られると考えられる。
第三に、返金の速度と手軽さが店舗選びを左右する可能性がある。返金完了までの日数や為替手数料の有無は旅行者の体験を大きく左右する要素であり、迅速でスムーズな返金を実現できる代行システムを導入している店舗が選ばれやすくなる時代が来ると見られている。
「制度が変わること自体は不正防止という妥当な目的に基づく。問題は、対応できる店舗とできない店舗の間で、訪日客の体験に差が生まれてしまうことだ」(観光政策アナリスト・湯浅郁夫氏)
システム投資や大手代行サービスの導入余力がある店舗と、対応が遅れる中小店舗との間で、今後インバウンド対応力の二極化が進む可能性がある。今回の制度改正は不正防止という明確な政策目的に基づくものだが、その実施過程で、日本のインバウンド消費に伴う決済データと顧客接点を誰が握るかという競争が同時進行していることも見逃せない。
11月の制度施行を前に、店舗側がどの代行事業者・決済インフラを選ぶかは、単なる事務コストの問題にとどまらず、今後数年のインバウンド戦略を左右する選択になりそうだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高野輝/戦略コンサルタント)