JAL純利益53億円・80%減の内幕…ANAとの明暗を分けた「非航空事業」の底力

ANAはなぜ踏みとどまれたのか

 一方のANAHDも、燃油費増加により連結営業利益は前年同期比43.5%減の207億円と大幅な減益を強いられた。しかし同社は期初、数百億円規模の営業赤字に陥る可能性も想定していたとされ、それに比べれば黒字を確保できたことは相対的な健闘といえる。

 ANAHDの増収を支えたのは、国際線旅客需要の伸びに加え、前年同期は連結対象外だった日本貨物航空(NCA)が今期から連結対象に加わった効果が大きい。貨物事業の取り込みは、旅客需要の変動に業績が左右されにくい収益基盤の多様化という意味合いを持つ。また、ANAグループは主力のANA本体に加え、Peach・AirJapanという役割の異なる2つのLCCを傘下に持つマルチブランド戦略を取っており、貨物・マイル関連事業を含めた分散型の収益構造が、燃油高という共通の逆風に対する耐性を高めた一因とみられる。

今後の焦点——通期見通しと構造的リスク

 両社とも通期の業績予想は据え置いている。JALは2027年3月期通期で売上収益2兆950億円(前期比4%増)、純利益1100億円(同20%減)を見込む。ANAHDは純利益960億円(前期比43%減)を予想しており、いずれも前期(2026年3月期)に記録した過去最高益からの反動減を見込む保守的な計画となっている。参考までに、2026年3月期の実績はJALが純利益1376億円(前期比28.6%増)、ANAHDが1690億円(同10.5%増)と、両社とも過去最高益を更新していた。それだけに、今回の急減益は「高水準からの調整局面」という側面も見逃せない。

 今後を左右するのは、中東情勢に左右される原油価格と為替の動向という不確実性の高い外部要因に加え、脱炭素対応で導入が進む持続可能な航空燃料(SAF)のコスト負担増という構造的な課題だ。JALは国際線旗艦機A350-1000の投入による燃費改善や、ZIPAIRなど中長距離LCCの収益貢献拡大を今後の巻き返しシナリオに掲げているが、その効果が顕在化するには時間を要するとみられる。

「今回の決算が示したのは、単なる燃料価格の一時的な高騰ではなく、化石燃料への依存度が高い航空事業の構造的な脆弱性です。マイルや金融、貨物といった非航空・多角化事業をどれだけ厚みのある収益源に育てられるかが、今後数年の企業価値を左右するでしょう」(航空経営コンサルタント・中村哲也氏)

 満席の機内が象徴する需要の力強さと、利益を思うように積み上げられない収益構造。日本の航空大手2社が直面しているのは、「客を乗せて飛ばすだけでは儲からない時代」への本格的な適応を迫られている現実だといえるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=中村哲也/航空経営コンサルタント)

【主な参照データ】
2026年8月3日(JAL)、同7月29日(ANAHD)発表の決算資料および両社IR公表情報