「ブックオフの成長を制約してきたのは販売力よりもむしろ仕入れ力だった。全国の生活動線に入り込んでいるコンビニを買取窓口に転用する発想は、実店舗網を持たない事業者にとって理にかなっている。ただし査定の精度や入金までの日数がユーザー体験を左右するため、初期の運用実績が今後の普及速度を決めるだろう」(流通コンサルタント・永田由紀氏)
ファミリーマート側の狙いは、来店動機の創出にある。不要品を発送しに来た顧客が、レジ横のコーヒーや惣菜、雑誌などを「ついで買い」する可能性は小さくない。来店頻度と滞在時の購買単価を引き上げる仕掛けとして、この提携を位置づけることができる。
同時に、現場のオペレーション負荷をどう抑えるかも重要な論点だ。今回の設計では、申し込みは専用のWebサイトで完結し、店舗側は査定や検品を行わず、あらかじめ梱包された荷物をロッカーやマルチコピー機経由で受け付けるだけで完結する。人手不足が指摘され続けるコンビニ業態において、店員の作業を「荷物を受け取るだけ」に絞り込んだ設計は、増収施策と省人化を両立させる工夫といえる。実際にこの運用がどこまで店舗負担を抑えられるかは、全国展開後の検証を待つ必要があるが、少なくとも設計思想としては「店員の判断を極力介在させない」ことに主眼が置かれている。
「コンビニの現場は慢性的な人手不足に直面しており、新サービスが店員の負担を増やすだけであれば長続きしない。今回のスキームは、査定という専門性の高い工程をブックオフに委ね、店舗側は受け取りと発送という定型作業に特化させている。この役割分担が実際に機能するかどうかが、全国1万6,000店という規模でのオペレーションの成否を左右する」(同)
この提携を単なる2社間の業務連携として見るだけでは、全体像を見誤る可能性がある。伊藤忠は2026年2月にブックオフGHDと資本・業務提携を結んだ株主であり、同時にファミリーマートの完全親会社でもある。つまり、ファミリーマートの店舗網、ブックオフの査定・リユースのノウハウ、そして伊藤忠が持つ物流・海外事業ネットワークという三者の資産を、一つの事業スキームとして結びつける構図が成立する。
伊藤忠とブックオフGHDの提携発表では、ブックオフが展開する米国やマレーシアなどの海外拠点と、伊藤忠が持つ「世界61カ国・約90拠点」のグローバルネットワークとの連携も視野に入っているとされる。ブックオフの店舗で再販に適さないと判断された衣料品や資材が、そのまま廃棄されるのではなく、繊維関連や海外のリユース・リサイクルルートに乗せられる余地があるとすれば、これは単なる国内リユース事業を超えて、資源循環の設計に商社が関与する試みとして捉えることができる。ただし、具体的な海外連携の詳細については両社から公表された情報が限られており、現時点では提携の目的として示された方向性にとどまる点には留意が必要だ。
リユース市場は、リユース経済新聞の推計によれば2024年時点で3兆円規模を超え、景気変動の影響を受けにくい産業として存在感を増しているとされる。物価上昇が続くなかで中古品への需要が底堅く推移していることは、伊藤忠がこのタイミングでブックオフとの関係を強化した背景の一つと考えられる。
「総合商社がリユース領域に関与する意味は、単に一事業者への出資にとどまらない。川上の仕入れから店舗での接点、そして再販できない資源の再流通までを一気通貫で設計できる立場にあるのは、物流と海外ネットワークを持つ商社ならではだ。今回のスキームがどこまで機能するかは、実際に循環させる資源の量とルートが確立されるかにかかっている」(同)